芳香族炭化水素系洗浄剤(EMクリーン)による光学部品の洗浄について

日鉱石油化学(株) 山内辰也

 EMクリーンは、トリクロロエチレンや塩化メチレンなどの塩素系洗浄剤を代替することを目的として、溶解力の優れた芳香族炭化水素を基材として開発した洗浄剤である。代替洗浄剤として広く用いられるようになった当社主力製品のNSクリーンを代表とする飽和炭化水素系洗浄剤が、鉱物系加工油などの脱脂洗浄に用いられているのに対し、EMクリーンは、塩素系洗浄剤からの代替が遅れている樹脂、ピッチ、ワックスなどの汚れに対する洗浄に適している。EMクリーンは、溶解力、乾燥性、引火点、粒子除去性などが異なる製品を取り揃えており、洗浄現場の要求に応じて選択されている。

 EMクリーンの洗浄対象としては、光学レンズを始めとするガラス光学部品、ウレタン、エポキシおよびシリコン樹脂注型機などの樹脂加工機器、コンデンサ、コネクタおよび発振子などの電子部品、セラミックス、金型などが挙げられる。対象汚れとしては、ワックス、アスファルトピッチ、レンズ保護膜、樹脂、接着剤、フラックス、ロジン、研磨粉などである。

 現在、光学レンズは塩素系洗浄剤、乳化剤、水系洗浄剤、市水、純水およびイソプロピルアルコール(IPA)からなる多槽の洗浄システムで洗浄されているのが一般的である。これに対し当社はその一部分または全系を、EMクリーンを中心とした炭化水素系洗浄剤で代替するシステムを提案している。

(1) 部分代替システム

 既存洗浄システムのうち、塩素系洗浄剤のみをEMクリーンで代替するもので、乳化剤以降は既存のシステムがそのまま利用できるのが特徴である。

 塩素系洗浄剤と同様、EMクリーンはピッチ除去を行った後に乳化剤で置換される。

(2) 全系代替システム

 本質的に必要である三つの洗浄剤をすべて炭化水素系洗浄剤で置き換え、既存洗浄システム全体をEMクリーン・NSクリーンで代替するシステムで、溶解力に優れたEMクリーンと、リンス・乾燥に優れたNSクリーンの特徴を組み合わせたものである。

(a)ピッチ除去: 塩素系→EMクリーン

(b)粒子除去: 水系→EM粒子除去剤

(c)リンス・乾燥: IPA→NSクリーン

 光学特性が優れているものの耐水性が低い硝材はこれまで手拭き洗浄で対応するしかなく、高級品向け用途に限られていたが、このような光学部品でも全炭化水素系洗浄システムでは機械洗浄が可能となる。

 全系を代替することにより、

(a)塩素系洗浄剤、IPAの切替

(b)洗浄槽数の低減

(c)洗浄時間の短縮

(d)耐水性の低い硝材部品の機械洗浄

 が期待される。

 このように当社はEMクリーンとNSクリーンを使い分け、または組み合わせるユーザーに最適な代替洗浄システムの提案を進めている。

(これは、「第14回洗浄技術セミナー(平成14年2月22日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)

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