未来型洗浄剤の開発 〜含フッ素エーテル(HFE)洗浄剤の開発

独立行政法人 産業技術総合研究所
フッ素系等温暖化物質対策
テクノロジー研究センター
水門 潤治

地球環境産業技術研究機構(RITE)新規冷媒等プロジェクト室では、産業技術総合研究所フッ素系等温暖化物質対策テクノロジー研究センターとの共同研究のもと、オゾン層破壊や地球温暖化などの環境問題に配慮し、さらに実用性の高いフロン代替物の開発を目的として、平成6年度から平成13年度までの8年間、冷媒、発泡剤、洗浄剤用途におけるフロン代替物の開発を行ってきた。

洗浄剤用途では、様々な含フッ素化合物の洗浄物性、毒性、安定性、温暖化影響の評価を行い、エーテル結合を持つ含フッ素化合物であるHFE(ハイドロフルオロエーテル)7化合物を候補として選定した。これらのHFEは、洗浄剤として優れた特性を持ち、安定性に優れ、低毒性であり、さらに地球温暖化影響も小さいことから有用な代替洗浄剤として期待される。

また、開発したHFEの洗浄剤としての実用性を確認するために、様々な洗浄評価を行った。

@ HFEとアルコールから成る新規共沸組成物の開発

 HFE単体の油脂やフラックスに対する溶解力は充分ではないが、HFEに汎用溶剤を添加することにより改善することが可能である。中でも共沸組成物は、液相と気相の組成が等しいことから、洗浄時に安定した液組成を保つことが可能であり有用である。HFEはアルコール類と共沸する傾向があり、さらに沸点の高いHFEほど共沸組成物中のアルコール組成比が高くなり、溶解度も大きいことが分かった。特にHFE-449mec-fとアルコールの共沸組成物は、高い溶解力を持ち、不燃性であることから有用な組成物として期待される。

A HFE-347pc-fを用いた水切り乾燥

 HFEにアルコールまたは界面活性剤を添加した組成物は、水切り乾燥に利用することが可能である。小型実機試験装置を用いて評価を行ったところ、HFE-347pc-fとアルコールの組成物は、市販されているフッ素系水切り組成物と同等もしくはそれ以上の性能を示すことが明らかになり、実用化レベルの性能を持つことが分かった。

B HFE-55-10mec-fcを用いた炭化水素系洗浄剤のすすぎ乾燥

 HFEは、パラフィン系の炭化水素系洗浄剤に対して特異な相互溶解特性を示す。この溶解特性を利用して、HFE洗浄剤を加熱することにより炭化水素系洗浄剤のすすぎを行い、冷却することにより高温下で過剰に溶解した炭化水素系洗浄剤を相分離により除去することが可能である。HFE-55-10mec-fcを用いた炭化水素系洗浄剤(日鉱石油化学社製NSクリーン100)のすすぎ乾燥試験では、洗浄液のリサイクルが容易で、短時間で高い乾燥性が得られることを確認しており、有用な洗浄プロセスを実現した。

 以上のように、RITE新規冷媒等プロジェクト室では、実用性が高く、さらに温暖化影響の小さいHFE系洗浄剤の開発を行った。

(これは、「第15回洗浄技術セミナー(平成14年6月21日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)

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