塩素系溶剤の現状と課題 −クロロカーボン衛生協会の取り組み−

クロロカーボン衛生協会

技術部長 山下 俊一

 クロロカーボン衛生協会は塩素系溶剤の適正な使用を推進することにより、生活環境、作業環境の維持改善を図り、併せて関連業界の健全なる発展に寄与することを目的に昭和60(1985)年10月1日に設立され、塩素系溶剤の安全性データの収集、使用と取扱についてのユーザーの指導と啓蒙等を行っている。

 最近の主な活動についてまとめると以下の通りである。

1. 書籍・リーフレットの発行

 平成12年9月、クロロカーボンに関する物理的・化学的性質、有害性、関係法令・道府県条例等、適正な使用・管理などをわかりやすく解説するとともにMSDS、関連用語解説等の参考資料も包含した「クロロカーボン適正使用ハンドブック(改訂版)」を発行し、またリーフレットは、本年4月に「ジクロロメタン(塩化メチレン)による健康障害を防止するための指針について」を、また、9月には「使えるんです塩素系溶剤−適正管理で優等生−」を発行した。

2. 適正使用セミナーの開催

 平成13年2〜3月に、前記「クロロカーボン適正使用ハンドブック(改訂版)」を資料として東京、大阪等9会場で適正使用とPRTR法の解説をするセミナーを開催した。

3. 有害大気汚染物質排出量削減自主管理

 クロロカーボン衛生協会は、日本化学工業協会の自主管理における幹事団体であり、塩素系溶剤等について20団体と約20社の計画とフォローアップのとりまとめを行っている。第1期は1995年を基準年とし1997〜1999年の3年間に削減する排出量の目標を立てて取り組み、目標を達成することができた。現在は2000年度を基準年とする第2期に入っている。

4. 土壌汚染対策法への対応

 クロロカーボン衛生協会は従来より環境基本法、水質汚濁防止法或いは廃棄物の処理及び清掃に関する法律の遵守等、適正使用の指導・啓蒙活動に努めてきており、活動に特段の変化はないものの法及び省政令の内容等の情報の先取り、或るいは浄化技術の情報収集を行い、関係方面への情報提供を実施してきている。

5. 海外団体との提携

 アメリカのハロゲン化溶剤工業連盟(HSIA)及びヨーロッパのヨーロッパ塩素系溶剤協会(ECSA)とは連絡を密にし、共同で毒性試験のスポンサーにもなっている。最近ではテトラクロロエチレンの生殖毒性、塩化メチレン毒性の種間相違、トリクロロエチレンの腎臓毒性等を実施した。

 以上、クロロカーボン衛生協会の活動について述べて来たが、塩素系溶剤は有害性の研究がすすんでおり、未知のリスクはほとんどなく、適正に使用すれば、その優れた溶剤特性が社会の発展に大きく貢献するものであると考えられる。

 しかしながら、最近は「環境ISO(ISO 14001)の認証取得をするので使用できなくなる」と言うような誤解、また、近々使用禁止になるとの根拠のない風評が出ている。当協会としてはこのような誤解、風評を払拭するのが大きな課題であり、その手始めとして前出の「使えるんです塩素系溶剤−適正管理で優等生−」を発行した。今後も塩素系溶剤について正確に理解してもらうための努力を継続する所存である。

(これは、「第7回洗浄技術フォーラム(平成14年9月26日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)

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