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精密洗浄における2流体ジェット洗浄技術

島田理化工業株式会社 産機事業本部
システム技術部   岡田 治毅

 近年、HD(ハードディスク)関連分野においては、半導体製造分野に匹敵する、微粒子除去技術が求められている。

 ここで紹介する微粒子除去技術の一つである、2流体ジェット洗浄技術は、主に半導体製造分野で用いられており、パーティクルの除去目的として用いられてきた。

 本稿では、HD製造プロセスでの精密洗浄においても有効と考えられる技術として、2流体ジェット洗浄技術のメカニズム及び異物除去評価について述べる。

図1 2流体ジェット洗浄の概略図

1. 2流体ジェット洗浄

2流体ジェット洗浄は、被洗浄物表面に高速の液滴を噴射し、異物を除去することを目的とする洗浄法である。上図、図1は2流体ジェット洗浄の概略図である。

2流体ジェットは、特殊ノズルにより液滴を高速に加速することで、従来のジェット洗浄、ピュアソニック洗浄では除去困難といわれている0.03μmオーダの超微細粒子を除去することができる。尚、直管ノズルとは単純直管形状のノズルで、音速以上の流速は得られない。

図2 液滴速度解析結果

 

 図2は、超音速ノズルと直管ノズルを用いた場合の液滴速度の解析結果である。

2. 洗浄評価

 下記に洗浄条件を示す。2流体ジェット洗浄、および機能水を用いた洗浄について評価するため、直管ノズルを用いて純水で洗浄した結果を比較対象とした。評価1は、直管ノズルを用いて純水で洗浄した場合、評価2は、超音速ノズルを用いて純水で洗浄した場合である。処理対象ウェーハは、2流体ジェット洗浄、リンス、スピン乾燥の順で処理される。洗浄条件の内、ノズル角度、ウェーハ回転数、ノズル出口〜ウェーハ表面間距離等ジェット洗浄に関するパラメータは、直管ノズルを用いて最適洗浄条件を求め、今回の評価条件に適用した。

 *洗浄条件

 評価1 − 直管ノズル:N2ガス+DIW

 評価2 − 超音速ノズル:N2ガス+DIW

 *洗浄レシピ : スピンナ部での処理工程

-

@
ジェット洗浄
A
リンス
B
スピン乾燥
ウェーハ回転数
(RPM)

400

400

2000

処理時間
(sec)

20

20

30

 洗浄対象サンプルとしてベアウェーハに、0.03〜3μmのPSL(ポリスチレンラテックス)粒子を付着させたものを用い、洗浄効果の確認は、洗浄前・後のウェーハ表面に付着しているPSLを観察することにより行う。

 図3に各PSL粒子径における液滴速度と除去率との関係を示す。

 この結果より洗浄対象となるPSL粒子径が0.1μm以下の場合、液滴速度が速いほど洗浄効果が高くなることがわかった。


図3 液滴速度と除去率

 

まとめ

 冒頭で述べたように、HD製造プロセスでの精密洗浄においても、2流体ジェット洗浄技術は、非常に期待される有効な手段であると思われる。

 なお、本稿の2流体ジェットに関する内容は、通産省プロジェクト「超先端電子技術開発促進事業」の一環としてNEDOより委託されて実施した。

(これは、「第7回洗浄技術フォーラム(平成14年9月26日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)

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