- -


半導体洗浄の化学と次世代洗浄

三菱化学(株) 情報電子カンパニー

化学システムサービス事業部   森永 均

 ナノの世界で回路を形成する半導体デバイスの製造プロセスは汚染との戦いである。プロセス中の基板/デバイス表面には、様々な経路から汚染が降りかかる。汚染の除去にはウェットあるいはドライの洗浄が用いられる。最新の超LSI製造工程では全工程中約25%、実に100工程にも及ぶ洗浄が行われている。

 洗浄には、(1)高清浄な表面を、(2)副作用なしで、(3)短時間、かつ、(4)再現性良く、(5)低コストで実現することが求められ、その要求レベルはデバイスの高集積化、低価格化と共に年々厳しくなっている。

 洗浄には常に技術の高性能化・効率化が求められるが、それを支えるのは、根底にあるメカニズムの理解である。微量汚染の洗浄に必要な機能は、汚染の脱離機能(機能1)、汚染の再付着防止機能(機能2)、下地膜のエッチング機能(膜内部に取り込まれているか、膜と強固な化学結合を作っている場合)(機能3)の三つに集約される。パーティクルを例に取れば、機能1には超音波などの物理力、機能2にはアルカリや界面活性剤添加によるパーティクル/基板表面間のゼータ電位的反発作用、機能3にはアルカリによるSi/SiO2膜のエッチング作用が利用されている。

 次世代デバイス洗浄では、高清浄化/低コスト化の両立と言った従来からの課題に加え、超微粒子(<100nm)の除去、洗浄の際のデバイスパターンダメージ(エッチング/物理力による)の低減、枚葉化対応、新材料対応が課題として挙げられる。特にSub100nm世代のLSI洗浄では、100nmを切る超微小パーティクルの除去が必要になるが、この際、従来のような「強力な超音波」や「数nmもの下地部材のエッチング」を用いることは出来ない。微細なパターンの倒壊や寸法変動が問題となるためである。化学/物理力低減下で、高清浄な表面を達成するためには、表面から僅かに引き離された微量汚染を確実に捕らえるような高度な再付着防止技術(機能2)を有した高性能洗浄剤が必須となる。

 課題の克服にはキレート剤、界面活性剤などの微量添加剤の活用が有効である。これらは次世代デバイス洗浄の要件に合わせて新たに開発する必要がある。新開発のキレート剤添加アルカリ洗浄剤では、従来の半導体アルカリ洗浄の最大の欠点であった様々な金属汚染の再付着を防止でき、これによって、高清浄な表面を、再現性良く、低コストで得ることが可能となる。また、CuやCoなど新材料のSi表面へのクロスコンタミ防止にも有効である。界面活性剤は、低エッチング量、低超音波出力下で微小なパーティクルを除去する際に効果を発揮する。これらの添加剤技術をフル活用すれば、短い洗浄ステップ数で汚染が効率的に除去できるために枚葉洗浄時の大幅なスループット向上も可能となる。

(これは、「第17回洗浄技術セミナー(平成15年2月21日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)

元に戻る