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電解「水」の謎解き一手法

株式会社三社電機製作所
技術本部
〇山地 信幸  村田 裕康

「水」の特異性について、電解水としての物理化学的見地より解明する一手法が試みられた。「水」本来の極性溶媒としての溶解力に立ち、電解水の性質を「pH(水素イオン濃度)−pe(電子濃度)−ORP(酸化還元電位)」ダイアグラムと「有効塩素」相態図を重畳した特性上から位置付けることで、「洗浄と殺菌」の仕組みが網羅されることになる。下図は、電解水の特性を「pH(水素イオン濃度)−pe(電子濃度)−ORP(酸化還元電位)」で示すものである。注目される「水」は還元水ミネラルウォータである。還元水特性を有しながら酸化され難く活性酸素の良い面の効果があり殺菌性があり、尚且つ中性で飲料水としても優れている。

(これは、「第18回洗浄技術セミナー(平成15年6月13日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)


バートレルâ洗浄剤の優位性と洗浄事例

三井・デュポンフロロケミカル
菊地 秀明

1. はじめに

1995 年にフロン・エタンの生産が廃止されて以来数多くの代替洗浄剤が開発上市された。それから8年が経ち、淘汰が進むなかで、デュポングループがその代替品として開発したバートレル スペシャルティーフルードは、多くの分野において採用され、成長を続けてきた。

 その大きな理由として優れた洗浄性能、安全性、環境性が挙げられる。本報にでは、特に水きり乾燥分野におけるこのバートレル®の他の溶剤/方法と比べた優位点、及び洗浄事例についてについて紹介する。

2. バートレル 溶剤の特徴

 水きり乾燥方法として一旦IPAで水を除去した後IPAをバートレル XFで乾燥する方法と、バートレル X-E10で直接水を乾燥させる2つの方法がある。バートレル XFの最大の特徴として、安全性、低い環境負荷は勿論の事としてその強い不燃性が挙げられる。引火点、発火点がないのはもちろん、その不燃性により多種の有機物がより多くの割合で混合しても、不燃性を維持する点である。それにより後述するようにより多くのアルコールを不燃範囲で混合することにより、より優れた水きり性能を発揮することが可能である。また使用温度が低温のため非常にデリケートな素材に対しても影響が殆ど無い。また置換方式を採っているので、乾燥後の染みの問題もなく高品質化に対応できる。

3. IPA乾燥

 水をIPAで乾燥した後IPAをフッ素系溶剤で乾燥する技術は既に30年以上も前から用いられている。IPAが混入したフッ素系溶剤を水で洗浄することによりIPAを除去し、再使用している。この過程において高品質かつ経済性を追求するためには2つのポイントがある。1点目は水洗浄する際如何に効率よく水でIPAを除去するか、2点目は如何に水へ抽出されるフッ素系溶剤を少なく押さえるか、という点である。

 3-1. フッ素系溶剤からのIPA除去

 フッ素系溶剤からのIPA除去効率の従来のHCFCと比較した。図1に示すようにXF中のIPAはHCFCに比べ除去され易い。即ちHCFCに比べよりきれいなXFがIPA濯ぎ槽に戻るため、より被洗物の高品質化が達成できる。

3-2. フッ素系溶剤の水への抽出

水がフッ素系溶剤からIPAを除去する際、併せて抽出するフッ素系溶剤の比較を行った。XFを従来のHCFCと比較したとき、フッ素系溶剤中に含有されていたIPA濃度が高い時は抽出ロス量も多いが、IPA濃度が低い場合には却って少ない。また他のフッ素系溶剤と比較すると極めて少ない(図2)。即ち消費量が非常に少ないことを示唆している。

 フッ素系溶剤からのIPA除去効率の従来のHCFCと比較した。図1に示すようにXF中のIPAはHCFCに比べ除去され易い。即ちHCFCに比べよりきれいなXFがIPA濯ぎ槽に戻るため、より被洗物の高品質化が達成できる。

4. X−E10による水の直接乾燥

 バートレル®-E10を使用した水切り乾燥システムの特徴として、高品質、殆どの構成部材を傷めない、ロスが少ない、高い安全性等が挙げられる。特にロスに関しては、溶剤の水への溶解量は同一アルコール濃度の場合他社品と比較して1/2〜1/3程度である(図3.参照)

5. 事例

5-1. IPAの濯ぎ乾燥

ユーザー;光学機器メーカー

被洗物;カメラ用レンズ

採用方法;水→純水→IPA→バートレル XF(蒸気)

従来の方法;水→純水→IPA→他社品(蒸気)

代替理由;IPA濯ぎ剤の消費量が多い

結果;XFの消費量は他社品に比べ約2/3

品質も同等以上

5-2. 水の直接乾燥

ユーザー;家電メーカー

被洗物;有機EL用パーツ

代替溶剤;バートレル X―E10

代替理由;新規、30℃以上で膜剥離が生じるので低温乾燥が第1条件

乾燥工程;X−E10(US,20℃)→XE(US,25℃)→XE(蒸気)

結果;膜へのダメージ無し、染みなく乾燥

6. まとめ

以上述べてきたように、バートレル®を使用した水切り乾燥には、一旦IPAで水を置換した後IPAをXFで乾燥する方法と、水を直接X−E10で乾燥する方法がある。いずれの方法においても、バートレル®は従来方法に比べ優れた乾燥能力を発揮すると同時に、使用量の削減、コストダウンへも大きく寄与が可能である。

(これは、「第18回洗浄技術セミナー(平成15年6月13日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)

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