金属加工で使われる各種油剤の特徴と性能
JXTGエネルギー株式会社 潤滑油研究所 担当マネージャー 博士(工学)
柴田 潤一
古くから潤滑技術は、摩擦・摩耗の低減による省ニネルギーや省資源の実現という形で地球環境の保全に貢猷してきた。―方で、潤滑技術を取り巻く環境は、近年の地球環境問題に対する意識の高まりによって人きく変貌をとげつつある。例えば1980年代以降、潤滑岫やグリースなどの潤滑剤に使われる添加剤の安全性への懸念、そして油剤の漏洩、あるいは潤滑岫廃誼の処理が原因となる環境汚染を回避したいという娶望などが後押しし、潤滑剤にも環境との適合性が強く求められるようになった。実際に今日潤滑技術の現場で進められている研究開発を見てみると、[環境と調和した潤滑油]という共通のキーワードによる燃費向上、生分解性の付与、長寿命化、廃油リサイクル、低粘度化による燃費改善など環境負荷低減を目的にした課題が多い。
一方、ものつくりの現場おいても潤滑油はきわめて重要な存在であり、その役割は大きい。そこでは数多くの工作機械や各種の加工装置が稼働しており、これら機械装置自体を潤滑するのはもちろんのこと、高能率、高精度の製品製造を実現するため、個々の加工方法に応じた要求性能を漢たす潤滑油、すなわち加工油が使用されている。
今日のものつくりにおいても、環境に配慮したプロセスの構築は急務である。しかしながら、生産性を犠牲にしてまで環境への対応を優先するという方向にはなく、生産性は同等以上で、かつ環墳と適合する技術開発が強く望まれている。そこで本稿では、このような動向を踏まえ、「環境に優しいものつくり」をキーワードとしてここで使用される加工油、およびその後工程で使われるさび止め油についてそれらの特徴を概説する。