PRTR法施行に当たっての洗浄現場の対応策について

(株)ダン科学 平塚 豊

 本年4月に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」いわゆるPRTR法が施行され、製造工程として洗浄を行う事業者は有害物質として認められた第一種指定化学物質を含む洗浄剤を一定量以上使用している場合、その対象物質の年間の環境への排出量と、廃棄物としての移動量を来年6月に国へ届け出ることになった。

 この届出によって洗浄分野における有害化学物質の使用の実態が始めて把握され、行政や産業界が今後の環境対策を推進する上で重要な情報になるものである。そのためには各事業者が届出を誠実に実施することが必要である。洗浄に係わる事業者は非常に多く、しかも比較的小規模の企業の割合が高い特徴がある。そうした洗浄現場でも手っ取り早く排出量等を算出できる判り易いマニュアル作りを産洗協の事業活動として取り上げた。

 本発表は産洗協PRTR委員会が「よくわかる洗浄のPRTR対策」として纏め日刊工業新聞社から発刊した本の概要を一部ではあるが紹介し、このような資料の存在を承知してもらうことを目的とした。

 先ず対象事業者に該当するかを判定する手順は、法に示された事業者の要件、第一種指定化学物質使用の有無、対象化学物質年間取扱量を調べて確認する。届出が必要となれば洗浄剤別に作成された排出量及び移動量の算出マニュアルにある計算式に従って算出する。水系、準水系、塩素系、フッ素系、炭化水素系の各洗浄剤別に標準的なプロセスフローを設定し、洗浄システムにおける排出源を明確にし、法律に示された排出量、移動量を算出するのに用いる5つの方法を適宜使い分けて、非出源毎の算出式を作成した。

 テキストには水系洗浄と塩素系洗浄の二つの例について算出マニュアルの内容を紹介した。算出に当たっては実測しないと判らない量や濃度の必要が出てくるが、類似の洗浄作業からの過去の実績から凡そ推定できることがあり、その場合はその推定値を算出係数として算出式に採用している。また実測の方法としても比重や沸点の測定で溶剤中の油分濃度を求める簡易法を紹介している。小規模の洗浄現場のために出来るだけ繁雑な分析法を使わないでも届出ができるように心がけた。

 PRTR法の本来の意図は有害化学物質の管理体制を確立し、排出を抑制していくことにあり、事業者はそのために届出にかけた以上の努力を今後も傾注していく必要がある。

     (これは、「第6回JICC洗浄技術フォーラム2001」より、講師のご好意で
      作成頂きました“要旨”です。)


オゾンの発生と洗浄への応用

三菱電機(株)電力・産業システム事業所
産業・環境エンジニアリングセンター
安居院 憲彰(アグイ ケンショウ)

基板洗浄プロセスへの適用

 従来、液晶・半導体基板洗浄には薬液洗浄が用いられ、そのプロセスは硫酸と過酸化水素との混合液による有機物除去、アンモニアと過酸化水素との混合液によるパーティクルの除去、塩酸と過酸化水素との混合液による金属除去、さらに希フッ酸による酸化膜除去を基本構成としている。環境負荷とランニングコスト低減の為、オゾン水による薬品代替洗浄技術がある。オゾン水による有機物や金属除去については既に性能確認済みで、実用化に向け材料の耐オゾン性評価等が進められている。

 特に、オゾン水と0.1%程度の希フッ酸を併用することにより、除去が困難とされていた銅汚染も十分除去可能であることが実証されている。オゾン水の洗浄効果について表1にまとめる。

現在、本技術は実用段階であり、各社のオゾン水製造装置が製造ラインに導入されている。

表1.オゾン水の洗浄効果

 

除去メカニズム

パーティクル

レジスト
残さ

有機物

金属

自然酸化膜

SPM

溶解

 

 

APM

ξ電位

 

   

HPM

溶解

     

 

DHF

エッチング

   

オゾン

酸化溶解(アシスト法)

(pH調整)

(物理力)

(物理力)

(HF)

 

フォトレジスト剥離プロセスへの適用

 洗浄プロセスと同様に大量の薬液が使用されているフォトレジスト剥離が環境面から最も期待されている。一般に高温の濃硫酸や106液(ジメチルスルホキシドとモノエタノールアミンの混合液)等の専用液が使用されている。このプロセスへのオゾン導入には、剥離速度の改善が最大の課題である。オゾン水濃度を高めることで剥離速度を早める必要がある。フォトレジスト膜の剥離速度がオゾン水濃度にほぼ比例することはすでに確認されている。また、オゾン水を使用せず、直接オゾンガスによるフォトレジスト剥離方法も検討中である。

 フォトレジスト剥離プロセスにおけるオゾンの適用は実証段階であり、更なる技術開発により十分な剥離速度を得る為には、大容量・高濃度のオゾンガスもしくはオゾン水が必要になる

プリント基板洗浄

 プリント基板でも、薬品による有機物や金属の除去を行なっており、オゾン水により置換えが出来ないかの検討が始まり、一部実用化の段階にある。

オゾン洗浄の特長

 オゾンは酸素を原料として放電によって生成され、反応後は酸素に戻ることから、環境にやさしく、薬液のように廃液処理を必要としない特長がある。

 また、オゾンガス及びオゾン水はユースポイントで生成できる事から、薬液のような貯蔵・保管の煩わしさがない。

 オゾンによる洗浄は、対象物の表面を疎水性から親水性に換え、有機物は加水分解によって有機酸とし水に溶かして除去することを基本としている。図1にオゾン水の適用分野を示す。

図1.オゾン水の適用分野

 本格的に採用されるようになった現在、排水管からのオゾン臭が発生する等、残留オゾンの処理問題が顕在化してきた。また、高濃度・大容量化が進むにつれ、オゾンを安全に使う為に配管材料やセンサー・アクチュエータ等の寿命・信頼性についての評価も大切な課題である。

     (これは、「第6回JICC洗浄技術フォーラム2001」より、講師のご好意で
      作成頂きました“要旨”です。)


超音波洗浄機における騒音発生のメカニズムと騒音対策

超音波工業梶@加藤 弘

1.はじめに

 超音波洗浄機、中でも低周波(15kHz40kHz近辺)を使用する場合、“音”の問題を無視することはできない。特に、昔と現代の低騒音化に対する考え方が違ってきているので、注意する必要がある。

 今回は、周波数帯の異なる洗浄機別の、騒音発生の状況と対策方法、さらには、俗に言う“槽鳴り”について考察を行う。

2.超音波洗浄機別の騒音

 超音波エネルギ−を収束して使用するホ−ン型洗浄機(15kHz)は、紡糸ノズルや金属フィルタ−の洗浄に使用されている。このタイプは、強力型があるが故に、キャビテ−ション自体の音も大きく、非常に大きな音圧レベルの“騒音”が発生してしまう。

 また、一般的に使用されている振動板型洗浄機(40kHz近辺)では、ほとんどの場合、“騒音”レベルの音は発生しない。しかし、俗に“槽鳴り”と呼ばれる可聴領域の“騒音”が発生する場合がある。

 この“槽鳴り”は、水系洗浄剤(特に界面活性剤型)を使用した場合や、大きな槽で発生しやすい等の傾向がある。これについては、後程、考察する。

3.騒音発生の対策

 超音波洗浄機の場合、その本来の音を無くすことは不可能である。つまり、根本的な対策は、ほぼ不可能に近いと言える。

 よって、低騒音化の具体的な方法としては、騒音の発生源を、吸音材や遮音材等で囲ってしまう方法が一般的である。

 また、“槽鳴り”の対策方法としては、洗浄槽外壁の拘束や、吸音材や制振材等で槽壁の振動を吸収してしまう方法等がある。

4.騒音(槽鳴り)発生メカニズムの考察

 音響工学の基礎の中に、“自由壁面を持つ容器内の音場”に関する記述がある。

 この中の、直角平行六面体(壁面自由)の固有(最低)周波数を求める理論式を用いて、実際の洗浄槽における騒音測定(周波数分析)デ−タと、理論値とを比較し考察した。

 この結果、測定値と理論値が、非常に近似していることが確認できた。このことより、“槽鳴り”発生のメカニズムを、この理論に則り考察することができた。

5.おわりに

 現在行っている対策方法は、ほとんどの場合が事後対策である。

 よって、今回のような方法で、騒音発生のメカニズムを解明し、事前に根本的な対策が施行できるようにすること、あるいは、当初(設計段階)から騒音が発生しない洗浄機を製作することが理想であり、洗浄機メ−カ−の使命であると考えている。

     (これは、「第6回JICC洗浄技術フォーラム2001」より、講師のご好意で
      作成頂きました“要旨”です。)


不燃性ノンリンス型準水系洗浄剤「ユトルーナ」及びその洗浄システム事例について

(株)トクヤマ 望月 聡

 準水系洗浄剤「ユトルーナ」は、弊社がこれまで長年にわたって培ってきた洗浄剤および洗浄システムに関する技術を基に完成させた剥離型洗浄剤である。「ユトルーナ」は塩素系溶剤の代替洗浄剤として、高い洗浄性、環境にやさしい、安全性が高いなどの優れた特性を持ち、金属の脱脂洗浄に適している。また、省スペース、低コストの洗浄システムが可能で、弊社は、様々なニーズに対応した「ユトルーナ洗浄システム」の開発、販売を行っている。

今回、塩素系溶剤並みの洗浄力を有する「ユトルーナ」洗浄システム(傾動式洗浄装置)と、通常の洗浄では落ちにくい油脂に対し、脱脂性能の向上及び洗浄時間短縮を目的として開発した、「ユトルーナ TSA−T」とそれを用いた洗浄システムを完成させたので併せて紹介する。

「傾動式ユトルーナ洗浄システム」は、塩素系溶剤並みの洗浄・乾燥性能を得ることを目的として開発した。本システムは、「洗浄」、「液切り」、「乾燥」の3工程から構成され、各工程の処理時間を短く(1分)、かつ同じにすることにより目的をクリアーした。

洗浄工程は、洗浄カゴを傾斜し、回転させて超音波洗浄する。更に、洗浄カゴ内のワークに洗浄液を直接吹き付ける(液中噴流)ことで、洗浄能力を向上できる。

 液切り工程は、高速回転による液切りを行う。液切りにより、付着液量の99%以上を除去できるため、乾燥工程に持ち込まれる液量は大幅に削減でき、乾燥時間を短縮できる。更に、洗浄ワークに熱風を吹き付けることで、乾燥時間の一層の短縮ができる。一方、液切りした液は、洗浄槽に戻されるので、液のロスを低減できる。

 乾燥工程は、洗浄工程と同じく洗浄カゴを傾斜し回転させながら、ワークに直接熱風を吹き付けることで、効率的な乾燥を行い、乾燥時間を短縮できる。

 これらのことにより、比較的小さな部品や乾燥しにくい形状の部品(例えば袋孔部品)に対して、塩素系洗浄剤並みの高速洗浄・高速乾燥(1分処理)を可能にした。

 一方、「ユトルーナ TSA−T」は剥離型ユトルーナの専用前処理剤として開発した。両剤を組み合わせることで通常のユトルーナ洗浄システムでは落ちにくい油脂に対して、脱脂性能の向上、洗浄時間の短縮が実現できる。

 通常のユトルーナ洗浄システムは、付着油の油質によっては、洗浄性が悪くなったり、洗浄時間が長くなる場合がある。しかし、「ユトルーナ TSA−T」に常温浸漬処理した後、従来のユトルーナ洗浄することにより、洗浄時間を短縮し、洗浄性を大幅に向上させることができる。即ち、従来剥離型洗浄剤では適用の難しいと言われたケースであっても、「ユトルーナTSA−T」の浸漬処理を前処理に加えるだけで、ユトルーナ洗浄の特長をそのまま生かした経済的な洗浄システムを構築できる。

準水系洗浄剤「ユトルーナ」を用いた新しい洗浄システム2例を紹介した。これらのシステムにより、ユトルーナ洗浄の適用範囲を更に広げることができた。

     (これは、「第6回JICC洗浄技術フォーラム2001」より、講師のご好意で
      作成頂きました“要旨”です。)

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