No.54

機能性選択膜による洗浄溶剤ミスト排出抑制新技術

()EME  冠木 公明

  日本を含む世界の先進国が1995年末でオゾン層保護のためにCFC-113を全廃後、今日までに数々の環境保護が実施されており、検討中の課題も多い。

  特に、この5月には、地球温暖化に影響を及ぼしていると目されているVOC(Volatile Organic Compound/揮発性有機化合物)の排出抑制を指向して大気汚染防止法が改正されようとしている。本技術はこれに関する新技術で、洗浄ラインから大気に排出される洗浄剤などの溶剤ミストを、低廉で簡便旦つ小スペースの装置で10ppmレベルに抑えると共に、連続的に処理する新技術である。

 

1. 技術の特徴

  溶剤ミスト処理装置は、下段から特殊ミクロフィルターである機能性選択膜、溶剤ミストを溶解しない低粘度液体(「第1の液体」)、この液体と混じり合わないで2相を形成し旦つ溶剤ミストを溶解する低粘度液体(「第2の液体」)から構成されている。

 

2. 溶剤ミストの捕集

  本装置の上部は大気に連がっており、10torr程度の僅かに減圧して、溶剤ミストが装置内を通るようにしておく。洗浄ラインから排出される溶剤ミストは、上記"1"の下段部に導かれる。

  「第1の液体」の比重に対して

a)比重が大きく旦つこの液体に溶解しない溶剤ミスト(ハロゲン系洗浄剤、など):ミストは液体で冷却液化され、機能性選択膜上に溜まり、やがてその重量により膜を通して下方に落下捕集される。

b)比重が小さく旦つこの液体に溶解しない溶剤ミスト(炭化水素系洗浄剤、など):この液体を通過して、「第2の液体」に溶解捕集される。

c)「第1の液体」に溶解する溶剤ミスト(アルコール系洗浄剤、など):「第1の液体」の表面張力が次第に低くなるので、やがてこの液体は膜を通して下に落ち、本装置の構成がそがれるので、このような溶剤ミストには本技術は適さない。

 

3. 装置構成材料

 a) 機能性選択膜

表面張力が出来るだけ大きく、平均貫通細孔径均質な約20ミクロン以下のフィルター。フッ素系材質が最も良く、フッ系かシリコーン系処理でも得られる。

 b) 「第1の液体」

溶剤ミストを溶解せず表面張力が大きい液体が適する。使用温度は通常室温でよいが、溶剤ミストの通過抵抗が小さいように液粘度は低い方が望ましい。水が多くの溶剤ミストに適合している。

 c) 「第2の液体」

「第1の液体」より比重が小さく旦つこれと2相を形成し、溶剤ミストを良く溶解する液体。「第1の液体」に水を選択すれば、炭化水素系液体などがある。

 

4. 本技術が適合する溶剤ミスト

  上記"1"で述べた本装置の基本構成を数段重ねることで溶剤ミストの排出抑制効果が飛躍的に向上する。3段重ねにして、水/炭化水素系液体による実験では、アルコール系のような水溶性溶剤ミスト以外のミストの排出抑制効果は十分であり、大気排出量を10ppmレベルに抑えられることがわかった。



 

 

(これは、「第23回JICC洗浄技術セミナー(平成17年3月25日開催)《より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)

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