No.57

環境特性・不燃性・高洗浄力を兼ね備えた画期的洗浄剤「ゼオローラ ® HG10

日本ゼオン梶@木山 晴之

日本ゼオンが開発したフッ素系洗浄剤「ゼオローラ ® H」は、国内の法規制に一切該当しない環境特性に優れた溶剤として市場に認知され、優先的削減対象である塩素系溶剤をはじめ、オゾン層破壊能を有するHCFC類、更には地球温暖化効果の高いPFC,HFC類等の代替溶剤として採用を伸ばしてきている。今回、この「ゼオローラ ® H」をベースとした特殊テルペン系溶剤との混合組成により、不燃性を維持したまま塩素系溶剤同等以上の洗浄力を有する画期的な洗浄剤「ゼオローラ ® HG10」の開発に成功した。これにより、従来グレードであるアルコール混合共沸系の「ゼオローラ ® HTA」、ケトン混合擬似共沸系の「ゼオローラ ® HMK」とあわせ、「ゼオローラ ® Hシリーズ」のラインナップが益々充実した。

 

より高密度化・微細化・高信頼性が要求される半導体パッケージ・基板実装分野においては、洗浄力のみならず隙間や細管部への高い浸透性能が求められる。テルペン系溶剤は乾燥性、引火の危険性の問題だけでなく、溶解力が高いものの粘度と表面張力が高く、また液密度が低いため隙間や細管部への浸透性に難がある。今回開発した「ゼオローラ ® HG10」は、「ゼオローラ ® H」の優れた浸透力とテルペン系溶剤の優れた溶解力との相乗効果を狙ったものであり、細管部や袋穴を有する難洗浄物に対する洗浄性能の向上を図っている。鉛フリー化でより洗浄が困難になったソルダーペーストのフラックス洗浄はもとより、中質以上の加工油の脱脂洗浄やワックス洗浄にも適用可能である。

「ゼオローラ ® Hシリーズ」は、炭化水素系などの可燃性溶剤、及び水系や準水系洗浄剤が抱える問題点を解決する洗浄剤・洗浄システムである。すなわち、炭化水素系等の可燃性溶剤は、引火の危険性回避のための安全対策が不可欠であり、また乾燥に必要なエネルギー消費が大きいなどの課題がある。更には新たな環境問題としてVOC排出削減が始まっている。一方、水系や準水系洗浄剤は安全性に優れるものの、設備の大型化、排水処理コストが過大、炭化水素系同様に乾燥所要のエネルギー消費が大きい等の問題がある。「ゼオローラ ® Hシリーズ」はこれらの課題に解決策を与えるものである。

 

工業洗浄の分野では、かつてのフロン・エタンによる「溶剤洗浄」が淘汰され、昨今では水系・準水系洗浄や可燃性溶剤の台頭が目立っている。しかし、オゾン層破壊防止や地球温暖化防止、VOC規制といった地球規模での環境保全に待った無しの対応が求められる中、真に環境特性に優れた不燃性フッ素系溶剤による「溶剤洗浄への回帰」の期待が高まっている。「ゼオローラ ® Hシリーズ」は洗浄現場でのCO2削減・ゼロエミッション化の切り札として、今後よりいっそうの展開が図られることになろう。日本ゼオンでは、川崎の総合開発センター内に洗浄評価室を設置し、専門の技術者による洗浄評価・技術サポート体制を整えており、今後も顧客の要望に迅速に対応していきたいと考えている。

(これは、「第10回JICC洗浄技術フォーラム(平成17年9月1日開催)より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)

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