日本産業洗浄協議会

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「最新洗浄技術情報」

超臨界流体とそれによる新しい洗浄技術

東京都立大学大学院 応用化学専攻
教授 長浜 邦雄

1. CO2を中心とする超臨界流体の特徴

 資料(長浜、鈴木:食品への超臨界流体応用ハンドブック、pp.17 , サイエンスフォーラム(2002))に基づき以下の点について説明した。

(1) 臨界点

(2) CO2の圧力―温度―密度の関係

(3) 超臨界流体と常温常圧における気体や液体との比較

(4) 超臨界流体+溶質系の相平衡

2. 超臨界流体抽出プロセス

資料(長浜、鈴木:食品への超臨界流体応用ハンドブック、pp.27, サイエンスフォーラム(2002))に基づき以下の点について述べた。

(1) 超臨界流体抽出の原理と特徴

(2) 半回分式超臨界抽出装置

(3) 固体原料からの超臨界抽出

(4) 抽出プロセスに対する操作因子の影響

(5) 超臨界抽出工業化例

3. 超臨界CO2による新しい洗浄技術

資料(長浜:光技術コンタクト、Vol.41(4), pp.235 (2003))によって以下の点について解説した。

(1) 洗浄溶剤としてのCO2の特徴

(2) 超臨界流体洗浄の原理と基本プロセス

(3) 超臨界流体抽出と超臨界流体洗浄

(4) ポンプを使用しないCO2による洗浄システムの開発(㈱SR開発)

(5) シリコンウエハの洗浄(シャープ㈱)

4. 実用化を目指す超臨界CO2の利用技術

資料(長浜:M&E誌、9月号、pp.144 (2003))に基づき以下の点について解説あるいは紹介した。

(1) 超臨界流体脱脂法によるMIMプロセス

(2) 超臨界CO2による新しいめっき法(SNPシステム)

(3) 超臨界CO2による使用済み核燃料からのウランなどの分離

(4) RESS法による微細パターン形成

5. 超臨界流体利用技術の課題

これからの課題について簡単に触れた。

① 超臨界洗浄の原理は超臨界抽出と同じであり、すなわち抽出で開発あるいは用いられてきた種々の技術は洗浄についても十分応用できる。

② ただし、抽出では目的成分を超臨界流体に溶解させる必要があるが、洗浄では必ずしも溶解させる必要はなく、汚染物質を除去できればよい。それゆえ、たとえば衣服に付いた汚れを超臨界流体で洗浄する場合、その汚れを溶かす必要はなく衣服から剥がれ落とせ(除去され)ればよい。

(これは、「第20回JICC洗浄技術セミナー(平成16年2月20日開催)」より、講師のご好意で作成頂きました“要旨”です。)
産業用水系洗浄剤の環境対応

ライオン株式会社 化学品研究所
牛山 広俊

 1980年代オゾン層保護という世界的な環境問題から脱フロンを合言葉としてフロン代替洗浄剤が一躍注目を浴びることになった。

 これを契機に、特に電子部品洗浄に代表される精密洗浄分野の洗浄技術は飛躍的に伸びた。我々は当時から界面活性剤を主体とした

水系洗浄剤開発に特化し、いち早く本分野に参入した。脱フロン洗浄剤は炭化水素主体の非水系、炭化水素溶剤と少量の界面活性剤及び水を含有させた準水系、界面活性剤と水を主体とした完全水系に大別される。

 水系洗浄剤は水を基材として、界面活性剤の持つ可溶化・乳化・分散力に洗浄ビルダーと言われる添加剤を用いてその効果を最大限発揮させるべく工夫されている。このようにして水系洗浄剤は脱フロン洗浄剤として確固たる位置を確立してきた。

 しかし近年、洗浄力・信頼性のみではすまされない新たな環境問題が浮上し、産業用洗浄剤全体に更なる技術革新が求められてきている。今回その中でも水系洗浄剤開発の担当者の立場からその取り組み方について技術の方向性につき述べてみたい。

 洗浄剤に求められる環境対応への要求品質

は、①エネルギー消費削減(低温洗浄化)②化学物質使用量削減(洗浄剤使用量削減)③汚染物質排出量削減(排水負荷低減)④資源使用量削減(節水)⑤産業廃棄物削減(ゼロエミッション)に大別される。これらの数多い課題解決に向けた取り組み方を紹介してみたい。

① 低温洗浄化へのトライ:低温洗浄を可能にするための高洗浄力新規洗浄剤開発について述べる。洗浄温度は洗浄力に与える寄与率が非常に高い。産業界には常温固体の汚れが数多く存在する。今回光学部品分野における固体のレンズピッチ・保護膜等について低温洗浄の可能性を検討した。従来から技術蓄積のあるマイクロエマルション洗浄を更に発展させた高性能マイクロエマルション洗浄剤(サンウォッシュLPW-7)を開発し洗浄温度を従来の50℃以上の洗浄温度をを40℃以下にまで下げることに成功した。

② 洗浄剤の使用量削減は、洗浄剤の適正な管理でいわゆる『むだ使い』をなくせることまたどんな洗浄剤でも使用実態に合致した液管理方法があることを事例紹介しながら報告する。

③と④の汚染物質排出量削減は、洗浄ラインの標準化を提案する。これを行うことで、常に安定した品質の洗浄作業が行えることを念頭に、洗浄槽構成が如何に変化しても各槽の洗浄剤濃度、排水濃度が瞬時に把握できるシミュレーション技術を確立した。この技術を用いることで全行程の管理が出来るため、すすぎ水の必要量も数値で計算することが出来る。今まで根拠無くすすぎ水量を決定していたものが根拠ある数字で表される。その為すすぎ水の節約も可能になることを報告する。この技術開発には装置メーカー様のご協力は勿論、ユーザー様にご理解と多大なご協力を戴いて完成したものである。

⑤ ゼロエミッション対応については、排水に流出する微量の界面活性剤成分や、汚れから由来の有機物等を迅速に生物分解するための手法や、特に生物分解性に優れた界面活性剤の開発状況とその実力について報告を行うとともに、いわゆる産業廃棄物として廃棄されるだけであった洗浄槽の濃厚な洗浄剤廃液を簡単操作で分離し、上層は燃料として再利用し下層の水槽は排水処理を行い、再利用することが出来る排水分離型の洗浄剤開発につきその一端をご紹介する。

まとめ

 洗浄剤を取り巻く新たな解決課題に対して

解決すべきその方向性について若干述べさせて頂く。産業用洗浄剤を更に使いやすく、また地球環境に安全なものに発展させるためには、やはり洗浄剤開発のみならずプロセス開発の可能な装置メーカーさんとのコラボレーションおよび顧客のご理解が絶対条件である。三者の協力体制無くしてこれらの難題をクリアしていくことはまず、無理であると考える。

 私どもは今後益々洗浄剤開発に日夜研鑽し必ず顧客満足度の高い新しい洗浄プロセスを構築していきたい。



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