2006年5/6月

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1.「2006年版環境白書」

 環境省が毎年発表する「環境白書」の本年度版(2006年度)は、さる5月30日に閣議決定され国会提出を経て公表された1)。今回の環境白書は、第1回の公害白書から数えて第38回目となる。毎年“第1部 総説”に主要テーマが取り上げられているが、今年は「人口減少と環境」、「環境問題の原点:水俣病の50年」と、例年になく初めて2つのテーマが紹介されている。

 「人口減少と環境」 では、わが国において昨年、はじめて人口が減少し、今後、人口減少という新たな局面を迎えることから、人口減少やそれに伴う世帯の細分化、過疎化、都市の拡散といった様々な変化が環境にどのような影響を与えるかを明らかにし、これらの変化に対応した取組事例を示すことで、人口減少に対応した持続可能な社会の実現に向けた取組の重要性を呼びかけている。

 また、「環境問題の原点 水俣病の50年」では、今年、公式確認から50年を迎える水俣病を取り上げ、発生と拡大の経緯や被害救済の現状とともに今後は、医療対策等の充実だけでなく地域福祉と連携した取組が重要であることを述べている。

1.1 白書の構成

 環境白書は、環境基本法の第12条に基づいて作成され、前年度の“環境の状況及び政府が環境の保全に関して講じた施策に関する報告”(2005年度年次報告)と新年度における“前項の報告に係る環境の状況を考慮して講じようとする施策”(2006年度施策)とからなり、今年の白書の目次は表1のごとくである。

<表1>「2006年版環境白書」の構成

 前年度年次報告には、“第1部 総説”が年次報告の前に付されている。この総説は、2001年度の白書から設けられている部分で、毎年、主要テーマを定めて論じたものであり、今回は、“人口減少と環境”と”環境問題の原点:水俣病の50年”の二つが取り上げられている。

1.2 “人口減少と環境”の概要

  今年のテーマの一つ“人口減少と環境”の問題について、小池百合子環境大臣は、白書の冒頭で、以下のように説明している。

  “平成17年、わが国の人口は、明治以降、はじめて減少しました。子どもを生み育てやすい環境づくりを目指して、教育、労働、社会保障の面において取組が進められていますが、今後わが国は、人口減少時代というこれまでにない局面を迎えることになります。

 人口減少とそれに伴う少子高齢化は、地方部における急激な過疎化、都市の拡散などの人口の地域遍在といった様々な社会の変化を引き起こします。

 このことは、エネルギー消費量やごみ排出量などの環境負荷に影響を及ぼすほか、里地里山地域の生物多様性の危機や、都市の拡散による環境効率の悪化など、環境の面でも課題を生み出すこととなります。

 一方で、人口の減少は、多様な価値観やゆとりある生活環境をつくりだす契機となることが期待され、それは持続可能な社会を構築する大きな好機と見ることもできます。本白書では、環境面からみて人口減少の‘光’と‘影’について分析しています。”

 このような、人口減少という現代日本の社会生活における変化と環境問題との係り合いが、総説1のテーマであるが、環境省のホームページでは、本問題を以下のように要約している。

 

(1) わが国は平成18年から本格的な人口減少が生じることから、人口減少やそれに伴う社会や地域の構造の変化が環境に与える影響について分析している。具体的には、

@ 家庭においては、世帯の細分化や高齢化など により、エネルギー消費量やゴミの排出量を押 上げる方向に働くことが予想される。

A 企業や行政においては、いわゆる2007年問題 など労働力人口が減少することにより、現場の 環境管理体制が弱体化することが懸念される。

B 地方においては、過疎化や農林業活動などの 低下により、人為が加わることによって維持されてきた里地里山の自然環境が損なわれるとともに、鳥獣とのあつれきなどが生じるおそれがある。

C 都市においては、都市の拡散が進むことによ り、温暖化などの環境負荷が大きく、廃棄物処理費などの行政効率が低い都市となる傾向がある。

    このように、人口減少は環境の面から見て様々なマイナスの影響があることを述べている。

 

(2) 一方、人口減少時代においては、心の豊かさや自然回帰への志向が広がり、ゆとりある時間や生活空間が得られるなど、持続可能な社会に向けて好機と捉えることができる変化が起きる可能性を示している。

 

(3) このような考え方から、例えば、海外ではノルウェーにおける持続可能な交通の取組、国内では富山市におけるコンパクトシティの取組など、人口減少にも対応した先進的な取組事例を紹介している。さらに、このような取組を推進し、持続可能な社会を構築するためには、第三次環境基本計画に基づいた政策を進めていくことが重要と述べている。

<参考資料>

1) 環境省編:「平成18年版 環境白書 鰍ャょ うせい (2006.5)

2)関連ホームページ

・環境省 http://www.env.go.jp/

・白書情報     http://www.env.go.jp/policy/hakusho/

 

2.他の白書で取り上げられた人口減少問題

 本年度の環境白書で取り上げられたテーマの一つは、“人口減少と環境”であるが、この問題は、今年度に政府が発表した他の白書でも、重要テーマとして取り上げられている。

2.1 「2006年版中小企業白書」

 「2006年版中小企業白書」は、その副題として、“「時代の節目」に立つ中小企業〜海外経済との関係深化・国内における人口減少〜”を掲げ、もつ。人口減少問題について解説している1)

 同白書では、“第3部 少子高齢化・人口減少社会における中小企業”において、本問題について詳細な解析を行っている。以下にそのトピクスを紹介する。

(1) 日本社会の総人口減少は、中小企業の経営戦略や、わが国の雇用の7割を支える中小企業従業者の人生設計にも多大な影響を与える。

(2) 労働力人口の減少、高齢化率の増加などの長期トレンドを捉え、それらの経済にもたらすインパクトを分析する必要があある。

(3) 中小企業は目下、「段階の世代の引退」と、高度成長期に大量に創業した「創業者世代の引退」という2つの世代交代の波が重なり合い、事業継承と技能継承のいずれも重大な局面を迎えている、わが国が中小企業に蓄積してきた貴重な経営資源を散逸しないための方策を、経営者側(事業継承)、従業員側(技能継承)の両側面から分析する必要があある。

(4) 「子どもを産み育てやすい社会」の実現に向けた中小企業の役割を分析する必要がある。中小企業は大企業に比べて、自然発生的に若年者が就労しやすい環境となっており(フリーターから正社員への垣根が引くい等)、まt職場と育児が両立しやすい環境となっている。この要因を分析することで、わが国の雇用の7割をしめ

  る中小企業に適合した、新しい少子化対策の検   

  討が必要である。

(5) 「まちのにぎわい創出」。「新たな地域コミュニティ」「コンパクトなまちづくり」の議論により、商業と他の都市機能との相乗効果による中心市街地のにぎわい回復の手法を検討する必要がある。

2.2 「2006年版科学技術白書」

 「2006年版科学技術白書」は、その副題として、“未来社会にむけた挑戦〜少子高齢化社会における科学技術の役割〜”を掲げ、人口減少問題について解説している2)

 同白書では、“第1部 未来社会に向けた挑戦〜少子高齢化における科学技術の役割〜”において、本問題について詳細な解析を行っている。以下は、その中のトピクスの一部である。

(1) 科学技術への影響

 人口構造の変化は、科学技術創造立国を支える人材の確保という観点からも大きな影響を与える。・・・

今後少子化が進行する中で、若者世代の科学技術への関心の低下が続くと、科学技術関係人材について質の面でも量の面でも不足する事態が懸念される。

(2) 新たな社会システムの構築

    人口減少・少子高齢化の状況下で、「人間力」の向上、「科学技術創造立国」は、わが国の進むべき道を示すものとして一層重大な意義を持ち、新たな社会システムを実現すべきである。

(3) 人口構造の変化に対応した科学技術

    少子高齢社会におけるインフラは、子育てをしている人や高齢者などの社会参加を促すものであることが求められる一方、経済の成熟期にふさわしく、永く有効に使える、質の高いものがであることが必要である。そのため、長寿命で耐久性があり、リサイクルしやすい材料、効率的で丈夫な工法、長期にわたる安全確保のための維持管理手法などを開発しなければならない。

@  生涯にわたる健康のための科学技術

A  福祉向上のための科学技術

B  就労形態の多様化を可能とする科学技術

C  社会資本の有効活用に資する科学技術

D  安全で安心できる社会、持続可能な社会のための科学技術

2.3 「平成18年版高齢社会白書」

 「高齢社会白書」は、高齢社会対策基本法に基づいて政府が国会に提出する年次報告書で、高齢化の状況や政府が講じた高齢社会対策の実施の状況、また、高齢化の状況を考慮して講じようとする施策について明らかにしている。「平成18年版高齢社会白書」は、11回目にあたり、様々な統計資料をもちいてわが国の高齢化の状況を示し、その要因や影響について分析するとともに、平成17年度に政府が講じた高齢社会対策の実施状況、および平成18年度に講じようとする高齢社会対策について、高齢社会対策大綱に沿って記述している3)

 今回の白書では特に、人口減少社会における、就労、ボランティア活動等を始めとする高齢者の能力発揮について分析し、高齢者の子育て支援の取組等を取り上げている。

2.3 「平成17年版少子化社会白書」

 「少子化社会白書」は、少子化社会対策基本法第9条に規定する「少子化の状況および少子化に対処するために講じた施策の概要に関する報告書」であり、政府が毎年国会に提出するもので、平成17年版は2回目の発表である4)

政府は、2004年6月に、少子化社会対策基本法に基づく国の基本施策として「少子化社会対策大綱」を閣議決定した。また、同年12月には、大綱に盛り込まれた施策の効果的な推進を図るため、「子ども・子育て応援プラン」を策定している。

<参考資料>

1) ●編:「平成18年版中小企業白書 鰍ャょうせい (2006.6)

2) 文部科学省編:「平成18年版科学技術白書 国立印刷局 (2006.6)

3)内閣府編:「平成18年版高齢社会白書 鰍ャょうせい (2006.6)

4) 内閣府編:「平成17年版少子化社会白書 」鰍ャょうせい (2005.12)

 

3.オゾンホールの回復予測について

国立環境研究所は、このほど“オゾンホールの回復予測”について公表し、“2020年ごろにはオゾンホールの回復傾向が認められ、今世紀半ば頃

にはオゾンホールは解消されることが期待される。”

ことを明らかにした。

 同発表は、5月21〜24日、つくば市で行われた日本気象学会で行われたもので、それに先立ち、5月19日に報道発表も行われ1)、新聞紙上にも紹介された。

3.1 要旨

国立環境研究所は東京大学気候システム研究センターと共同で成層圏化学気候モデルを開発してきた。今回、フロンやハロンなどオゾン層破壊関連物質の将来の放出シナリオや二酸化炭素をはじめとする温室効果気体の今後予想される濃度変動を考慮に入れて、将来のオゾン層の変化についての数値実験を行い、今後オゾンホールは更に拡大するのか、オゾンホールはいつ頃回復すると期待されるか、について結果が得られた。

成層圏におけるオゾンの量や分布は、オゾンの生成や分解に関わる化学過程や大気の輸送に関わる物理過程、さらに太陽光の吸収や赤外放射と言った放射過程の間での複雑なフィードバックの結果生み出されている。したがって、オゾン層の長期の変化を予測するためには、存在するフィードバックの影響を考慮する必要がある。化学気候モデルとは、フィードバックの存在を取り込んだ数値モデルである。

今回の数値実験に用いた化学気候モデルでは、フロンなどを起源とする塩素によるオゾン分解だけでなく、これまでのモデルには充分に考慮されていなかったハロンなどを起源とする臭素によるオゾン分解も考慮されている。数値モデル実験の結果によれば、現在のオゾンホールの規模はほぼ最大の規模にあり、今後しばらくは大規模なオゾンホールの生成が続くものと予想される。しかしながら、2020年ごろにはオゾンホールの回復傾向が認められ、今世紀半ば頃にはオゾンホールは解消されることが期待される。

3.2 オゾン層保護に向けた取組

オゾン層の保護に向け、国際的な協調のもとでオゾン層破壊物質(フロンなど)の生産や使用の規制が進められてきた(図1 参照)。その結果、地上で測定しているフロンなどの濃度には1990年代半ば頃から減少傾向が認められるに至った(図2 参照)。  

また、オゾン層が存在する成層圏においても1990年代後半には減少傾向に転じたと考えられる。

一方、オゾンホールの規模は、年による変動が大きいものの、2000 年代に入っても全体としてはほぼ横ばい傾向(図3 を参照)にあり、回復に向かう明確な傾向は観測されていない。

3.3 フロン・ハロン濃度の変化とオゾンホール

オゾンホールの拡大は、人間活動によるフロンやハロンなどの大気への放出による濃度の増大が原因と考えられる。そのフロンやハロンなどの濃度は現在、成層圏においても減少傾向にある。しかしながらオゾン層の取り巻く環境(温室効果気体をはじめとするフロン以外の物質の濃度や気温などのオゾン層の気象条件)は、オゾンホール出現以前の1970 年代と比べると既に大きく異なっている。よって、フロンなどの濃度が順調に減少して1970年代のレベルにまで戻ったとしても、オゾンホールがフロンなどの減少に率直に追随して縮小・消滅するとは限らない。

3.4 数値モデルの開発

オゾン層が存在する成層圏では、化学的なオゾンの生成や分解、太陽光の吸収や赤外線の放出など放射による加熱・冷却、さらには大気の混合や物質の輸送などのプロセスの間でフィードバックが存在している。したがって、将来のオゾン層の変化を予測するためには、成層圏に存在する化学−力学−放射の間のフィードバックをあらわに取り込んだ成層圏化学気候モデルと呼ばれる数値モデルを利用する必要がある。

今回開発したモデルでは、フロンなどを起源とする塩素によるオゾン分解だけでなく、これまでのモデルには充分に考慮されていなかったハロンなどを起源とする臭素によるオゾン分解も考慮されている。更に、空間分解能の向上や物理過程に関する幾つかの改良を加えた事により、オゾンホールの発生時期や消滅時期が観測事実をよく再現できるようになった。

3.5 数値モデルを用いたオゾン層の長期変化の実験

1970年代後半からのオゾン層の変化についての数値実験を行った結果、1980年から1990年代半ばにかけて観測された、オゾンホールの面積が拡大し、オゾンホール内の最低オゾン量が大きく減少する様子が再現された。

更に数値実験期間を延ばしていくと、1990年代半ばから2010年代半ばまでは大規模なオゾンホールの出現が続く事が示唆される結果が得られた。しかし2020年代に入るとオゾンホールの面積が縮小し、最低オゾン量も増加する形でオゾンホールが回復ステージに入ったと思われる計算結果が得られた。さらに期間を延ばして計算を行った結果、今世紀半ば頃には南極のオゾン層は1980年レベルに回復するとの結果が得られた。(図4 を参照)

今回の数値モデル計算からは、オゾンホールの回復においては大気中の塩素・臭素量の減少が不可欠のものであり、これまでのオゾン層保護対策は有効に働いていることが示された。またモデル実験結果は、オゾン層は今後数十年に渡って脆弱な状況が続くことを示しており、モデル計算に用いた以上のフロンやハロンの使用・放出がなされた場合には、オゾンホールの回復はさらに遅れるものと予想される。

<参考資料>

1) 報道発表:「成層圏化学気候モデルを用いたオゾンホールの回復予測について」(2006.5.19)

2) 国立環境研究所HP:/http://www.nies.go.jp/

3) 問い合わせ先: 独立行政法人国立環境研究所大気圏環境研究領域大気物理研究室

主任研究員:秋吉英治(029-850-2393

 

4.「東京都VOC対策ガイド」

東京都はこのほど、中小企業現場におけるVOC排出抑制の自主的取組に役立つ資料として、「東京都VOC対策ガイド」を発表した。本資料作成に当たって、当協議会正会員のみずほ情報総研鰍ヘ東京都の委託を受け、基礎資料の調査・収集を行っている。同ガイドブックは2分冊からなり、工場からのVOC排出を削減するための具体的な抑制方法をまとめた「工場内編」と、塗装においてVOC発生の少ない塗料を選択するための情報を整理した「屋外塗装編」に分かれている。

洗浄工程に関する部分は、「工場編」の「金属表面処理」で21ページにわたっており、その表題を以下に紹介し、その一部を次ページ以下に掲載する(図5〜8)。

(1)  VOC発生要因のチェック(図5)

(2)  抑制策の選択(図6)

(3)  洗浄の必要性の見直し、清浄度の基準の見直し(図7)

(4)  起動手順、停止手順の確認(図8)

(5)  冷却水温度の適正化、冷水装置の設置

(6)  被洗浄物の置き方の工夫

(7)  洗浄液の交換・充填における揮発防止

(8)  洗浄機周辺の風の低減

(9)  局所排気装置による過剰吸引の防止

(10)局所排気の形式の変更等

(11)フリーボード比の確保

(12)被洗浄物の移動の低速化

(13)蒸気洗浄後の液切り、放置乾燥

(14)蓋・部分的な覆いの設置

(15)蓋の設置位置の確認

(16)洗浄液の保管・貯蔵における揮発防止

(17)水系洗浄剤への転換

(18)排ガス処理装置の導入(総論)

(19)排ガス処理装置(活性炭回収装置)の導入

(20) 排ガス処理装置(深冷凝縮装置)の導入

(21)密閉式洗浄装置の導入

<参考資料>

(1)  東京都環境局:「東京都VOC対策ガイド[工場内編]」東京都環境局環境改善部有害化学物質対策課、A4、99ページ(2006.4)

(2)  東京都環境局:「東京都VOC対策ガイド[屋外塗装編]」東京都環境局環境改善部有害化学物質対策課、A4、47ページ(2006.4)

(注)(1)および(2)のpdf版は、下記HPに公開されている。

http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/ chem/voc/vocguide/guide18.htm











2006年3/4月

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1.「揮発性有機化合物の排出抑制に係る自主的取組のあり方について(案)」

 

 去る3月30日に中央環境審議会大気環境部会の第9回会合が開催された。同会合での主な討議は、“揮発性有機化合物の排出抑制に係る自主的取組のあり方について”であり、その内容は、各企業が本問題の自主的取組を今後考るときの指標となるものである。以下にその概要を紹介する(括弧内は要旨)。

(1)背景

浮遊粒子状物質(SPM)や光化学オキシダントに係る大気汚染の改善のため、固定発生源からの揮発性有機化合物(VOC)の排出を抑制することを目的とした大気汚染防止法の一部を改正する法律(平成16年法律第56号)が第159回国会において成立し、平成16年5月26日に公布された。

この改正では、VOCの排出を抑制するために、法規制と自主的取組の双方の政策手法を適切に組み合わせること(ベスト・ミックス)が基本とされた。

このうち法規制に関する部分の実施方法に関しては、平成17年6月10日に大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令等が公布され、規制対象施設や規制基準等が明らかにされており、平成18年4月1日より排出規制が実施される予定である。

一方、自主的取組に関する部分の実施方法に関しては、平成17年4月末以降、本専門委員会において議論を重ねてきたところであり、今般以下のとおり意見を集約したものである。

(2)自主的取組についての基本的考え方

(2-1)自主的取組の位置づけ

平成16年2月の中央環境審議会意見具申「揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制のあり方について」においては、固定発生源からのVOCの排出抑制に当たっては、法規制か自主的取組かの二者択一的な考え方でなく、これらの手法のそれぞれの特性を活用し、より効果的な手法を構築

することが適当であり、双方の政策手法を適切に組み合わせること(ベスト・ミックス)により、より効果的な排出抑制の取組を進めることが必要である旨が指摘された。

これを踏まえて改正された大気汚染防止法においては、VOCに係る施策の実施の指針として、法第17条の2において「揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制に関する施策その他の措置は、……揮発性有機化合物の排出の抑制と事業者が自主的に行う揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制のための取組とを適切に組み合わせて、効果的な揮発性有機化合物の排出及び飛散の抑制を図ることを旨として、実施されなければならない。」旨が規定された。

さらに、平成17年3月の中央環境審議会答申「揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制制度の実施に当たって必要な事項について」においては、

@ 法規制と自主的取組の双方の政策手法を適切に組み合わせることを基本として規制対象施設の限定を行った結果、固定発生源からのVOCの排出総量を平成12年度から平成22年度までに3割削減するという目標において、規制によって削減するのは1割程度と見込まれ、自主的取組に基づき削減すべき割合は2割分程度と非常に大きなものとなっていること、

A しかし、自主的取組の進捗状況を勘案して、必要となれば、最終的には法規制で3割削減を担保することとなるので、事業者の裁量に委ねた柔軟な方式でも排出規制は進展すると考えられること、

B 規制対象外となる中小規模の施設からの排出、規制対象外の類型に該当する施設からの排出、排出口以外の開口部や屋外塗装作業等からのVOCの飛散については、自主的取組で対応することとなること、

C 行政においては、事業者の自主的取組を円滑に促進するための方策を総合的に検討し、取組の状況を把握・評価していくことが必要であること

等が指摘されている。

自主的取組については、その本来の性格上、事業者の自主性や創意工夫の下に推進されるものである。しかし一方では、先に指摘されているように、VOCの排出削減の取組において自主的取組が果たすべき役割は、法規制にも増して大きいものとなっている。また、自主的取組が平成22年度までに見込み通りの成果を挙げられるか否かは、将来の政策手法の組合せのあり方に直接的な影響を与えることとなる。さらに、自主的取組の対象となる排出主体は広範な業種・業態に及び事業規模も様々であり、自主的取組の経験が十分でない主体もある。これらの点を勘案すれば、事業者による自主的取組の進め方についても、自主的取組の性格を損なわない範囲で、一定の方向性を本委員会として示すことが適切と考えられる。

なお、今回提言する方向性は、直接的には自主的取組のみを対象としたものである。法規制対象の事業者の中には、法規制に対応した取組と自主的取組による追加的な取組とを区分することが難しく両者を一括した取組を講じる者もあると予想されるが、今回提言する方向性は、このような事例においても有用と考えられる。

(2-2)実施主体

(民間(個別企業及び業界団体)が自発的に排出削減取組を行い、必要な計画や指針についても、民間が自ら作成することを基本とすべきである。また、個別企業と業界団体の役割分担については、一律に定める必要はない。)

(2-3)計画の策定

・(計画の内容には、計画の目的、計画期間、計画目標及び具体的な取組内容等が記述される必要がある。)

・(計画期間は、遅くとも平成18年度を計画の始点とすることが望ましい。)

     (計画目標の設定に際しては、固定発生源からのVOCの総排出量を3割程度削減するという目標があること、またその中で、自主的取組によって削減すべきは2割程度と見込まれていることに留意する必要がある。)

・(評価指標として、代表的な個別物質の排出量を指標とする場合であっても、できる限り排出されるVOCの総量を併せて指標として用いることが望ましい。 )

(2-4)指針

・(個別企業等が計画を作成するための指針を業界団体が作成する否かは、各業界の実態に応じて任意に判断されるべきである。

・(は、業界を横断した共通の理解・対応を醸成することを目的として、計画に盛り込むべきと考えられる事項を示すことが望ましい。)

・(は、自主的取組を行うことを表明した個別企業や業界団体等のみに負担を強いることのないよう、それ以外の事業者(業界団体に属さない事業者及び自主的取組を実施しない業界団体に属する事業者)についても、排出実態を把握し、自主的取組を促す必要がある。)

 (2-5)検証・評価・公表のあり方

・(自主的取組の実施状況や効果を把握するため、検証・評価を的確に行うことが必要である。)

     検証・評価の実施主体は、自主的取組を行った主体が、自己検証・評価の結果を含んだ報告を作成し公表することが基本となる。)

     国は、対策の進捗を把握するため、自主的取組の状況の把握・評価を行う。)

 (3)自主的取組の主な内容

・(事業者が自主的取組として行うVOCの排出抑制手法としては、原材料対策による手法、工程管理による手法、施設の改善による手法、排気処理装置による手法等が挙げられる。 )

・(原材料対策によりVOCの排出量を抑制する手法としては、溶剤の低VOC化・非VOC化、・・・等がある。)

・(工程管理によりVOCの排出量を抑制する手法としては、蓋閉め等溶剤管理の徹底、・・・作業工程見直しによる蓋開放時間等の短縮等がある。)

・(施設の改善によりVOCの排出量を抑制する手法としては、施設の密閉化等の施設からの蒸発防止策、冷却装置の増設による蒸発量の減少及び回収量の増加、・・・製造設備の集約化等がある。)

・(排気処理装置によりVOCの排出量を抑制する手法としては、直接燃焼処理・触媒燃焼処理、吸着処理等による回収・再利用等がある。)

・(これらの排出抑制手法から実際に導入する手法を選定するに当たっては、一般に、まず考えられる手法を幅広くリストアップし、次に、事業の実態、事業に及ぼす影響、他法令等による規制、地域的特殊性、費用対効果等を考慮して、リストアップされたものの中から最適な手法又は手法の組み合わせを選定することとなる。)

・(最適な排出抑制手法を選定するためには、各産業によるVOCの使用・排出の特性等を考慮することが有効である。現在、印刷、塗装、洗浄の各類型については、各類型の産業を代表する業界団体において、その特性に応じた排出抑制対策のマニュアルを策定中であり、こうした作業で得られた情報が広く社会に提供されることが望ましい。)

 (4)検証・評価・公表の具体的方法

(4-1)自己検証・評価

・(自己検証・評価の報告においては、ア)VOCの削減状況、イ)計画の達成度、ウ)取組への努力の度合い等を、自主取組の実施主体が自ら検証・評価する。平成12年度を基準年度として、それ以降の取組について検証・評価することが望ましい。 また、計画の終了時のみの評価ではなく、毎年度又は中間年度での評価を行うことがより望ましい。)

     (行政は、情報の提供等により事業者の作業負担の軽減に努めるとともに、自主的取組のインセンティブを与えるよう努める必要がある。)

 (4-2)国(本専門委員会)による把握・評価

・(環境省の要請を踏まえ、本専門委員会において、代表的な業界について、公開された報告及び自己検証・評価の結果を順次把握・評価する。環境省は、関係国際地球観測年官庁と連携して、自主的取組の状況を委員会に報告する。)

(5)未対応業界・事業者に対する取組

・(国及び自治体は、VOC排出の可能性がある新規業種・業態の把握に努め、これらに属する企業・業界に対し、自主的取組への参画を促す。)

・(業界団体に属さない事業者についても、政府公報や行政窓口を通じた普及啓発等により、自主的取組への参画を促す。)

(6)地域性の考慮

・(地域単位で自主的取組の計画を策定し、検証・評価を行うことを事業者に求めることは、現時点では必ずしも必要でない。)

・(当面、行政において知見の充実に努めることとし、その進捗に応じて、自主的取組における地域性の考慮のあり方を引き続き検討していくことが適当。)

・(事業者が自主的に地域単位での排出量の集計等を行うことは望ましい。)

(7)自主的取組を支援するための措置

・(国及び地方自治体は、普及啓発、環境ラベル、率先調達、政策金融による支援、民間の技術開発の促進、有料事業者の顕彰等を進める必要がある。)

(8)大気環境モニタリング

・(対策の効果を把握するため、一般環境中の総VOC濃度のモニタリングを継続するとともに、主要な成分物質濃度を継続することが必要。)

・(国は、自治体の測定実績が乏しい分野について、自ら測定し、技術の確立・普及に努める。事業者が自主判断により測定を行うことも考えられる。)

(9)今後の取組

・(VOC排出抑制制度の実施状況の把握とともに、VOC排出インベントリの精度向上が必要。このため、未把握業種・業態の把握手法や算出方法について、専門家による検討を行う必要がある。

<参考資料>

中央環境審議会大気環境部会揮発性有機化合物排出抑制専門委員会第9回会合資料:「揮発性有機化合物の排出抑制に係る自主的取組のあり方について(案)」(2006.3.30)

 

2.「VOC排出抑制の手引き - 自主的取組の普及・促進に向けて -」

 揮発性有機化合物(VOC)の排出規制が、この4月1日から実施されることになった。事業者、特に中小企業が、具体的な対策を講ずるために必要な知識を得るための手引書がこのほど経済産業省から発表された。

この手引書は、「VOC排出抑制の手引き=

自主的取組の普及・促進に向けて=」と題され、経済産業省の依託を受けて、(社)産業環境管理協会が作成したものである。

 同書は、主に中小企業の関係者が、VOC排出削減の自主的取組に参加しやすいように、自主的取組とは何か、具体的に何をすればよいのか、どのような対策の仕方があるのか、を中心にわかりやすく解説されている。また併せて、法規制の概要、対象となる施設、その施設で行わなければならないことなどについても取りまとめられている。

 同書は、カラー印刷の本文編と参考資料編の2冊からなり、本文編は、以下の項目について、詳細な解説が付されている。

     第1章:VOC排出規制がスタートします

     第2章:法規制のあらましとその対応

     第3章:自主的取組のあらましとその対応

     第4章:VOC対策の考え方のあらまし

     第5章:VOC対策のコストと中小企業支援制度   

     第6章:おわりに

 


<写真1>同手引書の表紙

 

<参考資料>

・経済産業省(産業技術環境局環境指導室大気班)、(社)産業環境管理協会:「VOC排出抑制の手引き=自主的取組の普及・促進に向けて=」

本文編:A448ページ(2006.3)

参考資料編:A4133ページ(2006.3)

 

3.「関東地域における揮発性有機化合物(VOC)の排出実態・総量把握調査報告書」

 関東経済産業局は、このほど、「関東地域に

おける揮発性有機化合物(VOC)の排出実態・総量把握調査報告書」を発表した。

 同報告書は、広域関東圏(1都10県)における中小企業やアウトサイダーも含めた事業所における平成12年度及び平成16年度のVOC排出量を業種別に把握し、平成22年度までのVOC排出量削減の目標に向けた対策を進めるための課題を検討することを目標としている。

 具体的には、以下の項目に係る調査検討を行い、関東地域におけるVOC排出実態・総量把握についてとりまとめている。

     関連業種・製品・プロセスの整理

     PRTRデータ等の活用の検討

     調査対象業種及び事業者の選定方法の検討

     VOC排出量の推計方法の検討

     関東地域におけるVOC排出量の推計

     今後の見通しに係る検討

アンケートの対象は、合計10,000社で、

回答総数1、419社のデータを、以下の章立てで整理、分析している。

     第1章:関東地域における揮発性有機化合  

物(VOC)の排出実態・総量把握調査の概要

     第2章:総量把握調査のためのPRTR等     

の既存データ分析とマクロ推計

     第3章:揮発性有機化合物(VOC)の排    

出実態・総量把握に係るアンケート調査

     第4章:関東地域における揮発性有機化合  

物(VOC)の排出実態・総量把握

・ 第5章:今後の揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制推進についてのまとめ

<参考資料>

     関東経済産業局(資源エネルギー環境部環境・リサイクル課):「関東地域における揮発性有機化合物(VOC)の排出実態・総量把握調査報告書」

本文編:A4128ページ(2006.3)

概要版:A4、32ページ(2006.3)

 

4.VOC排出抑制マニュアル委員会の報告書

活ョリサーチセンターは、このほど「平成17年度揮発性有機化合物(VOC)排出抑制に係る自主的取組推進マニュアル原案作成(洗浄関係)委員会報告書」を発表した。

同報告書は、環境省(水・大気環境局大気環境課)の委託になるもので、その作成趣旨が、“はじめに”と“おわりに”とで、以下のように説明されている。

「・・・環境省では、中央環境審議会において大気汚染防止法に規定するVOC排出抑制制度の実施に必要な事項について、VOC対象施設類ごとに6つの小委員会を設置した。その一つの洗浄小委員会において、洗浄に係る規制対象施設、排出基準値、対象施設規模などについてまとめた規制案を平成17年2月に発表した。その目標については、固定発生源からの総排出量を、平成12年度から平成22年度までの間に3割程度削減するもので、このうち、自主的取組による削減割合が2割程度で、対象は、工業製品の洗浄施設及び洗浄の用に供する乾燥施設である。

自主的なVOC削減の取組みは、各事業者が、対策効果、コスト等を考慮して自ら対策内容を決定するものであるが、本調査研究において、「揮発性有機化合物(VOC)排出抑制対策の自主的取組み推進マニュアル」を作成することを目標にした。

本年度の調査研究報告書は、マニュアルに係る基本的な情報等の収集として、産業洗浄分野におけるVOCに係る使用状況、VOC対策の必要性、産業洗浄分野年におけるVOC排出抑制優良事例、産業洗浄分野における適用可能なVOC対策についてとりまとめ、自主的取組推進マニュアルの原案を作成し、中間報告としてとりまとめたものである。・・・

次年度において作成される「揮発性有機化合物(VOC)排出抑制対策の自主的取組み推進マニュアル(洗浄関係)」では、それらを整理して簡潔に表記する予定である。

なお、既存の洗浄装置を使用していくことを前提にした使用方法の見直し、運転・操作の改善、洗浄装置の改造など洗浄工程の改良によるVOC排出抑制技術は、洗浄関係の事業者にとって、重要なVOC排出抑制対策であり、マニュアルの重要部分になると考えられる。本年度の調査研究報告書では、その記載は少ないものとなった。それらは、典型的な洗浄システムである開放型3槽式洗浄装置(超音波洗浄、リンス、乾燥)実機の実測など実証実験に基づき、それらの効果を定量的に評価し“洗浄工程の改良によるVOC排出抑制技術”として掲載される予定である。」

     第1章:産業洗浄分野におけるVOCに係る使用状況

     第2章:産業洗浄分野におけるVOC対策の必要性

     第3章:産業洗浄分野におけるVOC排出抑制優良事例集

     第4章:産業洗浄分野における適用可能なVOC対策

     第5章:産業洗浄分野における自主的取組推進マニュアル原案

<参考資料>

・活ョリサーチセンター:「平成17年度揮発性有機化合物(VOC)排出抑制に係る自主的取組推進マニュアル原案作成(洗浄関係)委員会報告書」A4、155ページ(2006.3)

 

5.東京都のVOC対策

東京都は、VOCの排出抑制対策として、各種の計画を発表、具体的な活動をホームページで紹介している。

(1)  環境技術実証モデル事業「ジクロロメタン等有機塩素系脱脂剤処理技術分野」

環境技術実証モデル事業とは既に適用可能な段階にあり、有用と思われる先進的環境技術でも環境保全効果等についての客観的な評価が行われていないために、地方公共団体、企業、消費者等のエンドユーザーが安心して使用することができず、普及が進んでいない場合がある。

 環境省では、平成15年度より、「環境技術実証モデル事業」を開始し、このような普及が進んでいない先進的環境技術について、その環境保全効果等を第三者機関が客観的に実証する事業を試行的に実施することとなった。

 本モデル事業の実施により、ベンチャー企業等が開発した環境技術の普及が促進され、環境保全と地域の環境産業の発展による経済活性化が図られることが期待される。

 東京都は、環境技術実証モデル事業(ジクロロメタン等有機塩素系脱脂剤処理技術分野)における実証機関として環境省に選定された。

東京都は、対象技術の募集を行い、次の2件の実証対象技術を選定した。

     圧縮深冷凝縮方式溶剤ガス回収装置(潟c潟Jワ)

     有機塩素ガス回収装置(システムエンジサービス梶j

(2)  VOC対象アドバイザー制度

東京都は、VOCを取り扱う都内の中小企業に対して、VOC排出量削減に向けた自主的な取組を支援するために「東京都VOC対策アドバイザー」を派遣する制度を設けた。対象業種は、印刷、塗装、脱脂洗浄で、アドバイザーは、依頼現場でVOCの簡易測定を行い、工程の改善、原材料の転換、回収・処理装置の設置、融資制度の紹介等の助言を行う。 

(3)「VOC排出削減リーフレット」

東京都は、VOC排出削減対策を促進するために、VOC問題を分かりやすく解説したリーフレット「東京都のVOC排出削減対策にご協力ください」を作成した(ページ7〜11を参照)。

本件の相談窓口は、東京都環境局環境改善部有害化学物質対策課企画係(電話:03−5388−3503)である。

<参考資料>

(1)東京都環境局「東京都のVOC対策」のホームページ

http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/chem/voc/

(2)環境省:「平成16年度環境技術実証モデル事業:VOC処理技術分野(ジクロロメタン等有機 塩素系脱脂剤処理技術)実証試験結果報告書」A4,62ページ(2005.6)

(3)東京都:「(リーフレット)東京都のVOC排出削減対策にご協力ください」

A4、4ページ(2006.3)





2006年1/2月

★これまでの掲載分へ

1.「第17回モントリオール議定書締約国会合

 2005年のモントリオール議定書締約国会合(第17回)は、ダカール(セネガル)で12月12日〜16日に開催された。有限責任中間法人オゾン層・気候保護産業協議会の大川事務局次長(当協議会企画委員)より、その会合への参加報告を執筆して頂いたので以下にご紹介する。

1週間前には、第1回京都議定書締約国会合に出席したが、その会場の気温が約2℃であったモントリオールから、国際会議の舞台が+28℃のセネガルのダカールに移り、第17回モントリオール議定書締約国会合が12月12日〜16日開催された。パリダカで知られる西アフリカ・ダカールのしかも最西端に位置するメリディアンホテルに約350人が集まり、6月末に行われた公開作業部会で検討された議題の決議に向けての議論が展開された。今年は2006年〜2008年のモントリオール基金の額を決める年のため、予想通り交渉が長引き最終日の夜9時に終了した。太鼓を主体にしたアフリカ音楽の演奏で始まった開会式では、ウィーン条約20周年を祝いオゾン層の科学に貢献したMario Molina、F.S.Rowlandら13名の表彰式が行われた。会議ではECが全体をリードしていく姿が目立ち、議題も途上国を対象としたものが多くなり、そのために先進国が何をするのかが議論されている。以下に主な議題と検討内容につき概略する。

 

<写真1>締約国代表団を迎え民族楽器で歓迎する芸術集団

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<写真2>締約国会合で演説するオゾン事務局のマルコ・ゴンザレス事務局長

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(1)不可欠用途申請

CFC-MDI と臭化メチルの申請に関し、毎年米国の強引さが目立ったが、今回はいずれもTEAPの評価をベースにしたところで決着した。日本からはMDIの申請は無く臭化メチルもほぼ申請量が認められた。

(2)2006〜2008年のモントリオール基金

  TEAPの検討結果(440百万$)をベースに交渉した結果470百万$で決着した。

(3)プロセスエージェント

申請によりTEAPが評価し検討してきたものについてリスト表に追加することが認められた。さらに追加申請分については2007年に再評価が行われる。

いずれも殆どが四塩化炭素使用用途である。

(4)ワークショップ開催

@IPCC/TEAPによる特別報告書の専門家会議 26OEWG開催時(2006年7月)

A途上国に対する破壊技術 2006年2月

(5)回収・破壊関係

@冷凍空調機のCFC冷媒

TEAPが途上国向けのケーススタディを作成する。

A燻蒸用臭化メチル

各国が関連情報を提供しTEAPがまとめる

(6)途上国の全廃に伴う問題

@先進国による途上国向けCFC生産

止める方向で情報収集と来年スケジュール化を

ACFC-MDIと研究・分析用四塩化炭素の例外措置

前向きに検討していく

(7)議定書の改定・調整

ECが提案している問題だが今回も進展しなかった。

(8)次回開催

2006年はインドが開催に立候補した。また、モン

トリオール議定書20周年の2007年はモントリオールでとカナダが発言している。

 

2.クロロカーボン衛生協会は「二十年のあゆみ」を発行

 クロロカーボン衛生協会は、このほど20周年を迎えたが、その節目を記念して同協会の沿革と活動

の経緯をまとめた「クロロカーボン衛生協会・二十年のあゆみ」を発行した。

 同協会は、日本産業洗浄協議会とは深いご縁があり、当協議会設立初期より団体会員として、諸活動にご協力頂いている。特に、1994年より数年間は、オゾン層保護対策として、1,1,1-トリクロロエタンの代替技術への転換に対して深い協力関係を結んだ。最近では、揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制に関して、自主的取組を推進する各種委員会活動には、委員として参加いただいている。

「クロロカーボン衛生協会・二十年のあゆみ」には、同協会設立前からの 塩素系溶剤の生産、メーカーの組織的活動、各種資料等が紹介されており、文献としての価値も高い。以下に目次を紹介し、本文の中から興味ある資料を、同協会のご了解を得て紹介する。

2.1 目次

(1) 塩素系溶剤生産の沿革

(2) 塩素系溶剤の法規制の沿革

(3)クロロカーボン衛生協会の設立

(4)クロロカーボン衛生協会の活動

<協会の思い出>

     協会設立の頃の思い出

     1,1,1-トリクロロエタン規制の検討をめぐって

     クロロカーボン衛生協会での6年間

<資料編>

     クロロカーボン衛生協会設立総会開催ご案内

     クロロカーボン衛生協会設立趣意書

     トリクロロエチレン等適正利用セミナー開催ご案内

     巡回指導員制度について

     クロロカーボンニュース(創刊号)ご送付について

     トリクロロエチレン等有害性の調査について

     1,1,1-トリクロロエタンの使用実態調査について(お願い)

     「ジクロロメタン」の許容濃度の根拠となるべき研究に関する貴信についての情報及び当方意見

     METHYLENE CHLORIDE RESEARCH OVERVIEW

     歴代会長及び副会長

     歴代協会会員

     会員数の推移

     委員会組織の変遷

     塩素系溶剤の工業統計(生産量)

     塩素系溶剤の工業統計(出荷金額)

     塩素系溶剤の工業化年表

     塩素系溶剤の製造会社及び生産能力

     年表

2.2       塩素系溶剤の法規制の沿革(抜粋)    

(1)化審法

「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)は、PCBのような難分解性で高蓄積性の性状を有し、かつ人への長期毒性を有する化合物を規制することを目的として、昭和48年(1973)に制定された。化学物質の有害性・環境残留性の程度により製造(輸入)を規制するものであった。その後、環境庁によって化学物質の環境汚染調査が始まり、昭和49年(1974)から58年(1983)の間にPCBなどについて化学物質環境汚染実態調査が行われた。調査においては、早くからトリクロロエチレン等の塩素系溶剤の残留性が注目された。

昭和61年(1986)には同法が改正され、蓄積性は低いものの難分解性で、慢性毒性の疑いのある化学物質の規制が行われることになり、第1種特定化学物質、第2種特定化学物質、指定化学物質の分類を設け、指定化学物質については監視を行い、相当広範囲な地域で汚染が認められる場合は、第2種特定化学物質として管理を強めることになった。昭和62年(1987)にはトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどが指定化学物質とされた。平成元年(1989)には法改正により、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンが指定化学物質から第2種特定化学物質に指定された。

平成15年(2003)には国際的な環境保護の高まりから、今までの化学物質の人への影響を中心にした審査から、動植物の生態影響を配慮した審査が行われるように「化審法」が改正された。クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが第2種監視化学物質に指定された。

(2)環境規制

「大気汚染防止法」が昭和43年(1968)、そして「水質汚濁防止法」が昭和45年(1970)にそれぞれ制定された。平成5年(1993)には、「環境基本法」が制定され、人の健康を保護する目的で大気、水質、土壌及び騒音に係る環境基準が定められた。

(2.1)水質汚濁防止

昭和56年(1981)に八王子市、川崎市、府中市等で水道水源用の井戸水からトリクロロエチレン等が検出され、昭和57年(1982)には環境庁による地下水汚染実態調査でトリクロロエチレンによる汚染が認められた。そのことが契機となり、昭和59年(1984)2月には「水道におけるトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及び1,1,1-トリクロロエタン対策について」が厚生省環境衛生局水道環境部より、「地下水汚染対策について」が環境庁水質保全局水質管理課より出された。続いて、「トリクロロエチレン等の排出に係る暫定指導指針の設定について」が環境庁水質保全局より、「ドライクリーニングにおけるテトラクロロエチレン等の使用管理に係る暫定措置等について」が厚生省生活衛生局指導課、「トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及び1,1,1-トリクロロエタンに係る暫定排水濃度目標の設定について」が通商産業省立地公害局よりそれぞれ出された。

昭和59年(1984)12月には通商産業省基礎産業局に「トリクロロエチレン等適正使用等検討委員会」が設置され、昭和60年(1985)7月に同委員会より「トリクロロエチレン等適正使用等検討委員会報告書」が提出され、適正使用等のための体制整備として、「横断的組織母体を設立し、これを中核に速やかに対策及び今後の課題に積極的に取り組むことが必要である」との提言がなされた。また、同時に「トリクロロエチレン等の適正使用等の推進について」および「トリクロロエチレン等適正利用マニュアル」が出された。

昭和61年(1986)10月には「『トリクロロエチレン等適正利用マニュアル』に関する指導について」が通商産業省基礎産業局及び立地公害局より、12月には「ドライクリーニングにおけるテトラクロロエチレン等の使用管理の徹底について」が厚生省生活衛生局指導課から出された。

平成元年(1989)には、トリクロロエチレン等が下水道法施行令の下水の排除の制限に係る水質の基準に、そして廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の廃棄物の最終処分の基準、水質汚濁防止法施行令の有害物質に追加され、規制された。

平成4年(1992)から6年(1994)にかけて、水道法の水質基準(水道水)、水質汚濁に係る環境基準、土壌の汚染に係る環境基準にトリクロロエチレン等の規制が追加された。さらに、平成8年(1996)には水質汚濁防止法が改正され、地下水の水質の浄化に係る措置命令等の条項が加えられた。平成9年(1997)には地下水の水質汚濁に係る環境基準が改正され、平成14年(2002)には「土壌汚染対策法」が公布された。

(2.2)大気汚染防止

平成2年(1990)3月に「有機塩素化合物対策検討会」が環境庁に設置され、トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンの規制の検討が始まり、平成5年(1993)4月に「トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの大気汚染防止について」および「トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの大気中への排出に係る暫定対策ガイドライン」が出された。

平成9年(1997)にはトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンの大気汚染に係る環境基準が定められ、平成13年(2001)にはジクロロメタンが追加された。また、平成9年(1997)の「大気汚染防止法施行令」の改正により、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンは指定物質とされ、排出抑制基準が設定された。

平成16年(2004)には「大気汚染防止法」が改正され、揮発性有機化合物(VOC)に関する排出規制が追加され、塩素系溶剤は規制対象物質に含まれることになった。

(2.3)化学物質管理

平成8年(1996)に「大気汚染防止法」の一部が改正され、有害大気汚染物質対策の推進の条項が追加され、「事業者による有害大気汚染物質の自主管理促進のための指針」が公布された。

平成11年(1999)に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(PRTR法)および「ダイオキシン類対策特別措置法」が公布された。また、労働安全衛生法、PRTR法、毒物及び劇物取締法により、化学物質に関する情報(MSDS)の提供が義務づけられた。

(2.4)オゾン層保護対策

昭和62年(1987)にモントリオール議定書が採択され、CFCおよびハロンがオゾン層破壊物質として規制されることとなった。次いで平成2年(1990)には同議定書が改正され、四塩化炭素および1,1,1-トリクロロエタンが規制の対象物質となり、平成4年(1992)年の議定書の改正で生産および消費のスケジュールが採択され、平成7年(1995)末で製造および消費が全廃されることになった。

我が国では、昭和63年(1988)に「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」が公布され、平成3年の法改正で、四塩化炭素、1,1,1-トリクロロエタンが規制対象に加えられた。

(2)労働安全衛生

昭和47年(1972)に「有機溶剤中毒予防規則」が改正され、1,1,1-トリクロロエタンが第2種有機溶剤に指定された。昭和53年(1978)にはトリクロロエチレンが第1種有機溶剤に指定された。

平成7年(1995)から14年(2002)にかけてテトラクロロエチレン、クロロホルム、1,1,1-トリクロロエタン、ジクロロメタンに対して「化学物質による健康障害を防止するための指針」が出された。

平成9年(1997)12月に労働基準局通達で「変異原性が認められた化学物質の取扱について」が出され、ジクロロメタンの変異原性が報告された。

平成16年(2004)にはトリクロロエチレン、ジクロロメタンの「作業環境評価基準」が改正され、管理濃度が改正された。

2.3       クロロカーボン衛生協会の活動(抜粋)

(1)適正な使用および取扱の推進 

昭和59年(1984)から地下水汚染の問題が浮上し、その法規制対策として「水質汚濁防止法」、「化審法」の改正の検討が始まった。

設立初期のクロロカーボン衛生協会の課題は、これらの法改正に対応して、どのように塩素系溶剤の適正使用を進めていくかであった。

昭和60年(1985)11月に協会内に適正使用技術開発委員会を設置し、「トリクロロエチレン等適正利用マニュアル」の解説資料の作成を始めた。また、同年12月から塩素系溶剤の正しい使い方の講習会を始めた。昭和61年(1986)から63年(1988)にかけて全国主要都市で講習会を開催した。

「化審法」が昭和61年(1986)5月に改正され、トリクロロエチレン等が指定化学物質とされることになったことから、「『トリクロロエチレン等適正利用マニュアル』の解説」および適正使用のためのステッカーを発行した。また、日本クリーニング公害予防センター発行の「クリーニング業で使用するパークロロエチレン等の適正使用について『保守管理マニュアル』の解説」の編集に協力した。

昭和62年(1987)4月に、通商産業省基礎産業局化学品安全課より依頼された化学物質安全確保対策に関する実態調査に協力した。5月には『改正「化審法」について』の小冊子を発行した。クロロカーボンの適正使用と管理の全国的規模での恒常的普及を目指して、同年11月には、通商産業省化学品安全課の指導により、巡回指導員制度を設立し、巡回指導員による使用者の管理指導を行う制度を取り入れた。  

「化審法」の改正により、同法第24条第1項に有害性の調査の項目が加えられ、通商産業大臣および厚生大臣から同規定により当協会に対して、昭和63年(1988)12月20日付けで有害性調査結果を報告するようにとの指示があり、トリクロロエチレン等有害性調査委員会を設置し、四塩化炭素、トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンに関する調査報告書を翌年1月に提出した。

「塩化メチレン適正使用セミナー」を平成5年4月から全国各地で開催し、また『塩化メチレンの適正使用マニュアル』を平成5年(1993)3月に発行した。次いで『塩化メチレン適正使用マニュアル―金属洗浄分野における適正使用について―』を翌年6月に発行した。

平成6年(1994)から8年(1996)にかけては、「中小企業化学物質総合管理情報提供・指導に係る講習会」に講師を派遣し、環境保護のための塩素系溶剤の適正使用について全国各地で講演した。

平成8年(1996)12月には、今まで発行したマニュアル類、法規制の解説書等を集大成した『クロロカーボン適正使用ハンドブック(初版)』を発行した。同ハンドブックの発行に伴い、平成9年(1997)4月からクロロカーボン適正使用セミナーを全国各地で開催した。

平成12年(2000)9月には『クロロカーボン適正使用ハンドブック(改訂版)』を発行し、翌年2月からクロロカーボン適正使用セミナーを全国各地で開催した。

(2)海外情報の収集

(略)

(3)オゾン層保護への対応

昭和63年(1988)10月に「第1回世界1,1,1-トリクロロエタン産業環境会議」(チェスター)が開催され、製造業者からなる日本代表団を編成し参加した。この会議は、世界の1,1,1-トリクロロエタンの製造業者および3業界団体(クロロカーボン衛生協会、米国ハロゲン化溶剤工業連盟(HSIA)、ヨーロッパ塩素系溶剤協会(ECSA)からなる3団体)が参加して、オゾン層保護対策の対象になっている1,1,1-トリクロロエタンに関する情報をお互いに交換するのが目的であった。平成元年(1989)4月に[第2回世界1,1,1-トリクロロエタン産業環境会議](ワシントン)が開催された。[第3回会議]は平成2年(1990)4月に東京で開催され、国内外の製造業者代表および日米欧の協会の代表者が出席した。議題は、(1)1,1,1-トリクロロエタンの環境問題と規制、(2)塩素系溶剤の大気汚染影響評価研究と毒性についてなどであった。

上記の3業界団体は、モントリオール議定書改正の検討において、1,1,1-トリクロロエタンの市場動向の正しい統計資料を提供するために、第三者機関(ケム・システム社)に依頼して調査報告書『Methyl Chloroform Applications and Consumption Outlook in the USA, Western Europe and Japan』を作成し、UNEPに提出すると共に、「第2回モントリオール議定書締約国会合」(ロンドン)に向けて、小グループによる打ち合わせ会議を行い、1,1,1-トリクロロエタン規制対策について検討した。

平成元年(1989)8月に、具体的にどのようにオゾン層破壊物質を規制していくのかその方法を審議するために「第1回モントリオール議定書改定に関する公開作業部会」(ナイロビ)が始まり、平成2年(1990)6月には「第2回モントリオール議定書締約国会合」(ロンドン)が開催された。この会合で四塩化炭素および1,1,1-トリクロロエタンの廃止が討議され、1,1,1-トリクロロエタンについては廃止のスケジュールを前倒しで検討することになった。「モントリオール議定書改定に関する公開作業部会」の第2回から4回においては会員会社から代表が出席した。その後、情報収集のために、モントリオール議定書に関連する技術、経済アセスメントパネル、UNEP溶剤技術選択委員会、プロセスエージェント・ワーキング・グループ会合、プロセスエージェント・タスクフォース会合などの会合にも参加した。

 平成2年(1990)2月に「有機塩素化合物の大気環境影響評価の研究」について工業技術院公害資源研究所と共同研究契約を締結し、同研究所大気環境保全部汚染物質変換研究室に当協会より研究員1名を派遣した。同研究は同年10月に完了し、その結果を「塩素系溶剤の対流圏における分解過程と大気環境への影響評価(1)」と題して、第31回大気汚染学会で報告した。

 平成元年(1989)6月に、日本における産業界のオゾン層保護対策を推進するために、日本フロンガス協会(日本フルオロカーボン協会)が事務局となり、特定フロン使用合理化推進協議会が同協会を含む関係38工業団体によって発足した。平成2年(1990)6月には、1990年のモントリオール議定書の改正を受けて、同協議会の活動をより一層強化し、オゾン層破壊物質規制の実効を上げる必要が生まれたため、関連4団体(日本フロンガス協会、クロロカーボン衛生協会、特定フロン使用合理化推進協議会、第三世代フロン開発プロジェクト推進室(財団法人地球環境産業技術研究所の一部))によって同協議会の組織の改編が検討され、日本フロンガス協会、クロロカーボン衛生協会を含む55の関連組織によって、オゾン層保護対策産業協議会(有限責任中間法人オゾン層・気候保護産業協議会)が発足した。当協会は同協議会に加入し、委員会に委員を派遣するなどで活動に協力した。

 平成4年(1992)11月に「第4回モントリオール議定書締約国会合」(コペンハーゲン)が開催され、この会議でモントリオール議定書の附属書Bに記載されている規制物質(四塩化炭素および1,1,1-トリクロロエタン)の生産量および消費量の調整および削減が採択され、平成7年(1995)末で同物質の生産および消費を廃止することが決まった。

平成5年(1993)から塩化メチレン適正使用セミナー、オゾン層保護のための代替洗浄技術のセミナーを全国規模で始めた。このために必要な『塩化メチレン適正使用マニュアル』、『1,1,1-トリクロロエタン削減・全廃マニュアル』などの資料を作成した。

平成6年(1994)4月には、平成7年(1995)末の1,1,1-トリクロロエタンの生産および消費の全廃に向けた中小企業への対応の必要性が日増しに叫ばれるようになり、1,1,1-トリクロロエタンの製造業者を含む洗浄剤の製造業者および洗浄装置の製造業者が中心となり産業洗浄分野におけるオゾン層保護対策を推進する目的で、日本産業洗浄協議会を発足させた。当協会は特別団体会員として同協議会に加入した。

平成7年(1995)10月に開催された「CFC・ハロン代替物質及び溶剤技術選択会議」(International CFC & Halon Alternative Conference & Solvent Technical Options Committee Meeting、ワシントンD.C.)において、当協会の栗田企画調査部長が “The Stratospheric Ozone Protection Awardの個人賞をEPA (米国環境保護庁)より受賞した。

オゾン層保護対策産業協議会の設立と四塩化炭素および1,1,1-トリクロロエタンの製造および消費の廃止対策が進むと、協会としてのオゾン層保護対策への関わりは直接的な活動からオゾン層保護対策産業協議会へ協力する形に移って行った。

(4)海外協会との協力

(略)

(5)大気汚染防止への対応

平成7年(1995)6月に環境庁が「有害大気汚染物質検討会報告書」を公表し、その結果に基づいて具体的施策を進めることになり、7月には通商産業省環境立地局指導課から有害大気汚染物質の排出状況について調査依頼があり塩素系溶剤(6物質)について報告した。

平成8年(1996)1月には有害大気汚染物質排出削減の自主管理計画に取り組むことを決定し、9月には、当協会のクロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンの3年後の排出削減自主管理目標を定めた「クロロカーボン排出自主管理基準」および「有害大気汚染物質排出抑制自主管理計画」の案ができ上がった。6月には、通商産業省環境立地局および基礎産業局から有害大気汚染物質の製造、使用、排出等に関する実態調査の依頼があり、(社)日本化学工業協会と協力し調査結果をまとめ提出した。

その後、平成9年度(1997)から有害大気汚染物質排出抑制自主管理計画が始まり、年度ごとに排出量の集計および報告を行った。自主管理計画は第1期(1997〜1999年度)、第2期(2001〜2003年度)と行われ、それぞれ所期の目標が達成された。

平成9年(1997)2月にPRTRに関する集計マニュアルの資料作成の協力依頼が(社)日本化学工業協会からあり、原案の作成および内容の検討を行った。

中小企業事業団からの委託により『金属洗浄における塩素系有機溶剤の自主管理計画達成マニュアル‐大気汚染防止法の一部改正に基づいて‐』の編集に協力し、平成10年(1998)1月に出版した。

ジクロロメタンの大気排出実態調査を行い、平成12年(2000)12月に調査結果をまとめた。

(6)化学物質管理への対応

平成4年(1992)12月から塩素系溶剤の製品安全データシート(MSDS)6品目の編集に取組み、平成5年(1993)3月に完成した。

塩素系溶剤の製造工程のダイオキシン排出実態調査をC1(炭素数が1の化合物)およびC2(炭素数が2の化合物)の工程およびそれらの製品について行い、その調査結果を平成10年(1998)12月にまとめた。

残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)に関連して、環境省産業廃棄物課適正処理推進室からヘキサクロロベンゼン(HCB)に関する調査の協力要請があり、塩素系溶剤製造工程(テトラクロロエチレン)において平成14年(2002)12月に調査が行われた。

(7)労働安全衛生への対応

平成3年(1991)、日本産業衛生学会はジクロロメタンの許容濃度を中枢神経毒性の基準から許容濃度を100ppmと定め、暫定許容濃度50ppmとしていたが、催腫瘍性の基準から50ppmに改定することを提案したので、これ対して、当協会は、根拠としてZENECA中央毒性研究所で実施中の試験結果を引用し、100ppmを主張する意見書を提出した。その意見が認められ許容濃度は平成3年(1991)のままで延長となり、その後も引き続き毎年意見書を提出し暫定値のまま認められてきた。しかし、平成9年(1997)にはトリクロロエチレンの許容濃度は、神経毒性の基準から日本産業衛生学会許容濃度等に関する委員会で25ppmとされた。ジクロロメタンの許容濃度は、OSHA(米 労働安全衛生局)が25ppmに改正したこともあり、平成10年(1998)12月に50ppmすることが同委員会で審議され、平成11年(1999)には50ppmとなった。

平成16年(2004)10月にはトリクロロエチレン、ジクロロメタンの「作業環境評価基準」が改正され、管理濃度はトリクロロエチレン25ppm、ジクロロメタン50ppmとなった。

8)その他

(略)

2.4       塩素系溶剤の工業統計

<表1>および<表2>に、1949年から2004年までの56年間にわたる、7種類の 塩素系溶剤の統計資料を紹介する。

<参考資料>

     クロロカーボン衛生協会:「クロロカーボン衛生協会 二十年のあゆみ」A4/56p (2005.11)

 


 


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